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単一細胞単位での網羅的遺伝子発現解析とクラスタリング解析を組み合わせた機能未知遺伝 子の機能予測法の開発


樽井 寛1  峯田 克彦2  林 哲太郎1  洪 健智1  五條堀 孝2  阿形 清和1

理研CDB・進化再生1,国立遺伝研・生命情報・DDBJ2


われわれはプラナリア解離細胞の単一細胞単位での網羅的な遺伝子発現解析からプラナリアの 神経細胞の明確な分業化と高い多様性が存在することを明らかにしてきた。しかしながらあまりにも種類が多 すぎて、クラスタリング解析が困難なほどであった。そこで、今回、視神経とその周辺の神経細胞に限局して、 神経細胞のクラスタリングを試みた。 プラナリアの眼を含む組織から細胞解離液を調製し、FACSを用いて分取した単一細胞からsingle cell PCR法を用いてcDNAを調製した。得られた372個の単一細胞由来のcDNAに対し、神経関連遺伝子53遺伝子 の発現解析を行った。その結果、ロドプシンとアレスチンを共発現している細胞が11個検出された。他51遺伝 子の発現解析から、プラナリアの視細胞は神経ペプチド関連遺伝子を90%以上の細胞で発現し、プラナリアの 他の神経細胞と同様、神経ペプチドを主要な伝達物質として利用していることが示唆された。一方、アセチルコ リンレセプターやグルタミン酸レセプター等の発現頻度はそれぞれ20%と限られ、かつ発現細胞が異なること が明らかとなった。細胞を対象としたクラスタリング解析から、ロドプシン、アレスチンを発現する細胞で独立し たクラスターが形成され、細胞の機能に基づいた解析が可能になると考えられた。さらに遺伝子を対象とした クラスタリング解析から、ロドプシンとアレスチン、コリントランスポーターとコリンアセチルトランスフェラーゼ、 および5種類の神経ペプチド関連遺伝子がそれぞれ独立したクラスターに分かれ、遺伝子を機能単位で分類 することが可能であることが判明した。実際、ESTとDNAチップ解析で得られた機能未知遺伝子の中で、神経 ペプチド遺伝子群と同じクラスターに分類された遺伝子がみつかり、それらの機能未知遺伝子が神経ペプチド 関連の遺伝子カスケードで機能することが予測された。


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