○荒木 喜美1 春名 享子1,3 山村 研一1 荒木 正健2
熊本大・発生医学研1,同・遺伝子2,トランスジェニック3
ES細胞はノックアウトマウスの作製だけではなく、最近は再生医療の重要なツールとして各種臓
器への分化実験にも多く用いられている。その際しばしば問題になるのはfeeder細胞であり、これを除く手間が
必要であった。近年、feeder
freeのES細胞として、エジンバラ大で樹立された129/Olaマウス由来のCGR8やE14tg2aが用いられるようにな
ってきたが、キメラマウスを作製するためにはB6の胚盤胞にインジェクションする必要があり、これには熟練を
要する。
TT2 ES細胞は八木ら(Analytical Biochem. 214, 70-76.
1993)により樹立された、CBAとB6のF1由来のESである。TT2は、ICRモルラ胚をレシピエントとした凝集法を
用いて、容易かつ安価にキメラ作製を行えるという利点をもつ。従来のTT2の培養には、feeder細胞が必要で
あったので、feederなしで維持できるTT2のサブクローニングを試みた。
Knockout serum replacement
(KSR)と微量のFCSを加えたGMEM培地を用い、ゼラチンコートのみの10 cm
dishにTT2細胞を播き、単一細胞からのコロニーを形成させた。それらをピックアップし、6 cm
dishにまで増やしてストック、ICRモルラ胚と凝集させ、キメラ形成能を調べたところ、8ライン中5ラインから100%
キメラが得られた。最も成績の良かったラインをさらに2週間(6回)植え継いだものでも、キメラ形成能が保たれ
ていることを確認した。現在、このラインを用いてエレクトロポレーションを行い、得られたクローンでのキメラ
形成能を調べているところである。
feeder
freeの場合さまざまな薬剤耐性遺伝子が使用可能になるので、このTT2のサブラインは各種genetic
manipulationに有用なツールになると期待される。
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