○竹内 雅貴1 中林 潤2 上野 直人1
基生研・形態形成1,九大・院理・生物2
原腸形成は初期発生において非常に重要な形態形成過程である。原腸形成時の一連の細胞運 動の中で、特にconvergence and extension は組織における個々の細胞極性がcoordinate される事が重要である。近年、DrosophilaにおけるWnt/PCP シグナル経路が脊椎動物で原腸形成時の細胞極性に必要とされることが分ってきた。我々は以前の研究で、 Drosophila PCP 遺伝子として知られているprickleのXenopus 相同遺伝子:Xpkが原腸形成に必須である事を報告した。XPKの機能はWnt/PCP シグナルのoutput としてのJNK活性化を調節する点にあるが、その調節機構については解っていない。 今回、我々はXPKへ結合する因子として得られたSte20 kinase family に属するkinase (PIK; Prickle- Interacting-Kinase)について報告する。In situ hybridizationにより、PIKは初期原腸胚で背側に強く発現していることから、原腸形成において何らかの役割を 持つ事が示唆された。PIK 配列特異的なantisense Morpholino oligo. (mo-PIK)を用いたknock-down 表現型は原腸形成異常となり、PIK mRNA過剰発現でもmo-PIKと同様の表現型を示した。PIKと同様に、gain of function, loss of functionでの表現型類似はWnt11, Dsh, Stbm, Xpk,などWnt/PCP シグナル因子でも見られる。PIKは、いくつかの欠失変異体の解析からキナーゼドメインを介してJNKを活性化 した。また、dominant negativeを除く各constructsのJNK活性化活性と原腸形成阻害効果は相関していた。dominant negativeに働くPIK kinase negative formは原腸形成阻害効果を持ち、野生型PIKのJNK活性化を阻害し、HEK293T cellsでのDshによるJNK活性化も阻害した。 以上の結果から、PIKは原腸形成運動に必須の因子であり、Wnt/PCP pathway におけるJNK活性化において、そのキナーゼ活性を介して重要な役割を果たすと考えられる。
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