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メダカ胚の圧力応答のプロテオーム解析


高野 薫1  加藤 勇輝1  高野 貴子2

筑波大・物質1,帝京大・医・衛生公衛2


われわれはヒトの培養細胞を用いて、高圧力によりアポトーシスが誘導されることを見出した(pre ssure-induced apoptosis, 1997)。また熱ショックタンパク質(Hsp60, Hsp70)、微小管構成タンパク質(α-、β- チューブリン)等の発現量が変化し、ヒトのゲノムが高圧力に応答することを示した。本研究では、発生過程に おける遺伝子の圧力応答の探索を目指した。脊椎動物のモデルとしてメダカ近交系HNI の受精卵を選択し、遺伝子の圧力応答は産生タンパク質の二次元電気泳動法により総括的に解析した。はじ めに非加圧で各発生段階における胚の可溶性タンパク質の二次元電気泳動パターンを観察した。泳動パター ンは発生の進行と共に変動し、Iwamatsuのステージ分類によるstage10,16,22,30において、新たに出現するス ポットが増加するため、総スポット数が他のステージに比し増加した。増加したスポットの多くはその後の発生 の2stage以内で消失し、発生時期に特異的に機能するタンパク質と考えられる。初期胞胚期stage10は中期胞 胚転移(MBT)の起こる時期であり、後期原腸胚期stage16は神経板が形成され、頭尾方向や背腹方向の決定 や前脳・中脳・後脳・脊髄の大まかな区分決定が行われ、stage22では脳・心臓が発達し始める時期であり、sta ge30では体節血流が開始し、肝臓・孵化酵素腺の形成や脳・眼球が発達する時期である。次に、初期桑実胚( stage 8)、前期原腸胚期(stage 12)、後期原腸胚期(stage 16)で受精卵を100MPaで5分間加圧し、除圧後、経時的に二次元電気泳動パターンの解析を行った。除圧直後 からスポットの発現量の増加、減少、消滅が観察された。100MPaで5分間加圧したstage 16の胚では、除圧後α-チューブリン、β- チューブリンの発現量は加圧により減少した。非加圧では検出されなかったスポットも複数存在し、加圧により 誘導されるタンパク質であると考えられ、同定を試みている。


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