○海保 愛1 阿部 智行1 小笠原 道生1 遠藤 剛1,2
千葉大・理・生物1,CREST, JST2
Rho ファミリー低分子量 G 蛋白質の Cdc42 はアクチン重合を介した細胞突起形成や細胞極性形成を制御しており, またマウスの初期発生に不可欠であることが遺伝子ノックアウトマウスの解析から示されている.Tc10 および当研究室で同定した RhoT は Cdc42 に近縁の蛋白質で, これらは Cdc42 サブファミリーを構成している.Tc10 と RhoT も Cdc42 と同様に, N-WASP を介したアクチン重合により細胞突起形成を行うことを私たちは明らかにしている.そこで本研究では, これらの蛋白質の機能的な差異を明らかにするための一環として, ノーザンブロッティングと whole-mount in situ hybridization (WISH) により, マウスの発生過程, 成体, および培養細胞におけるこれらの遺伝子の発現を解析した.ノーザンブロッティングにより, Cdc42 は成体のさまざまな組織に普遍的に発現していることが示された.一方, Tc10 は骨格筋と心臓に高く発現しており, C2 骨格筋細胞や神経細胞の分化の過程で発現が誘導された.また RhoT は子宮(平滑筋)に顕著に発現しており, 神経細胞分化の過程で発現が誘導された.またマウス胚における WISH によって, Tc10 は体節, 肢芽, 脳, 眼胚に, RhoT は神経冠と肢芽の基部に高く発現していることが示された.発生段階が進むにつれて, Tc10 の体節における発現は前方から消失していった.RhoT の神経冠における発現は背側前方から後方に広がり, 前方から消失していった.また肢芽にみられた Tc10 と RhoT の発現は, 肢部の発生が進むにつれて, いずれも掌部と指に限定されていった.したがって Tc10 と RhoT は胚の発生過程においても既に特異的な発現を示した.これらの結果は, Cdc42 サブファミリーメンバーが胚と成体のいずれにおいてもそれぞれ独自の機能を担っていることを示唆している.
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