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mMab-21L1分子の機能解析


小島 拓哉  高橋 直樹

奈良先端大.バイオサイエンス


現在までにHox 遺伝子群は、前後軸に沿った形態形成に重要な役割を果たすと共に、細胞増殖、アポトーシス、脳の高次機能 に関与していることが明らかにされている。しかしながら、転写制御因子としてどのような遺伝子群を制御して いるかという点に関する知見は少ない。線虫 Mab-21 遺伝子変異体は、Hox 遺伝子変異体同様の Ray 形成異常を示すことから、Hox 分子の標的遺伝子の一つと考えられる。分子量約 40kDa の Mab-21 分子は、線虫、ショウジョウバエ、マウス及びヒトにおいてそのアミノ酸配列が高度に保存されているにも関わ らず、既存の機能ドメインを持たず、生体内における その役割は不明である。そこで培養細胞での過剰発現系を用いて、マウスホモローグ Mab-21L1 分子の生体内における機能解析を行った。 Mab-21L1 分子は、核及び細胞辺縁部に局在し、転写抑制剤及び蛋白質合成阻害剤によりその局在に影響を受けた。ま た細胞辺縁部における Mab-21L1 分子は、アクチン蛋白質及びアクチン mRNA と共局在性を示した。神経細胞の突起先端部及び、繊維芽細胞の細胞辺縁部では、アクチンを含む一群の遺 伝子の mRNA の移動や局所化した蛋白質合成が行われていることが知られており、次にアクチン遺伝子をレポーターに用 いて、機能的関与を検討した。その結果、Mab-21L1 分子の発現により、アクチン蛋白質の増加が認められた。また、アクチン、Vg1 等の mRNA と結合する ZBP- 1 と、Mab-21L1 分子が免疫沈降により共沈すること、共発現によりアクチン蛋白質の増加が認められた。これらの結果から、 Mab-21L1 分子は細胞内において、特定の mRNA の移動及びその翻訳過程において機能を果たすことにより、Hox 分子を介した形態形成に関与すると考えられた。


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