[1P104]

胎仔期におけるDNAプライマーゼGANPの発現と機能


桑原 一彦1,2  阪口 薫雄1

熊本大・医・免疫1,科技団・さきがけ2


DNAプライマーゼGANPは免疫応答で形成される胚中心(germinal center)で発現する高等真核生物の細胞複製における第二のDNAプライマーゼである。DNA複製に必須の分 子として知られるMCM3と直接結合していることから、リンパ細胞の分裂から分化に関わる機能分子と考えら れる。GANP遺伝子発現のホモ欠損マウスは胎生12.5日までに全例死亡し、胎児形成に必要であることが判 明している。そのマウスの組織学的解析から大脳新皮質の形成が障害されており、皮質形成での神経系細胞 の発生・分化に必要であることが示された。さらに、詳細な解析から、GANP欠損によって心血管系の形成に 著しい異常をみとめた。GANP欠損マウスでは心臓形成は一応見られるが、その内皮系細胞で異常なBrdUの 取込みを認め、心室内腔の狭窄が著しく、最終的にはうっ血性心不全を呈するものと推定した。正常マウスで のGANPのDNAプライマーゼ活性は502番目のセリンのリン酸化で判断できるが、そのリン酸化特異的抗体に よる免疫染色の結果から、GANPのDNAプライマーゼ活性が心臓形成に必要であるものと考えられる。以上の 観察は、GANP DNAプライマーゼが細胞増殖のステージから細胞分化への転換に関連することを示してきたこれまでの知見 を支持する新しい証拠として重要なものであり、胎生期における形態形成で必要な分子メンバーであることを 示唆している。


Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.