○佐川 和徳 志賀 靖弘 山形 秀夫
東薬大・生命
<目的>ミジンコが属する甲殻類は多種多様な形態を有する生物群で構成され、生物の形態的
進化と形態形成遺伝子との関連を考える上で重要な生物であると考えられる。形態形成遺伝子のミジンコ内
における機能解析には、形質転換系の確立が必須であり、この系の確立には、生殖系列の分化が胚発生のど
の時期にどこで起こるのか明らかにすることが重要である。今回我々は、多くの動物種において生殖系列特
異的に発現し、その分化に必須であることが報告されているvasa相同遺伝子に着目し、分子生物学的
解析を行ったので報告する。
<結果と考察>ミジンコにおけるvasa相同遺伝子のcDNA全塩基配
列を決定した結果、推測されるアミノ酸配列は他の動物種のvasa相同遺伝子産物と高い相同性を示し
、その機能発現に必須であるモチーフは高度に保存されていた。ミジンコVASAに対する抗体を作製し免疫染
色によりタンパク質の発現パターンを、またwhole mount in situ
hybridizationによりmRNAの発現パターンを解析した結果、胞胚期以降ではmRNAとproteinが生殖系列特異的
に発現していることを、また、それ以前のステージでは少なくともVASA
proteinが生殖系列特異的に発現していることを明らかにした。
ミジンコVASAのアミノ酸配列内にレトロウ
ィルスのgag遺伝子内にみられる核酸結合部位に類似した配列(gagモチーフ)のリピートが見出
された。また、ミジンコ同様、甲殻類内で比較的下等な生物として知られているArtemia
franciscanaのVASAにもgagモチーフが存在し、少なくとも下等な甲殻類ではこのモチーフが保存さ
れていることが推測された。更に、ミジンコvasa相同遺伝子の遺伝子構造を明らかにしたので併せて報
告する。
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