○金尾 智子1 岡本 武人1 宮地 幸久2 野原 功全1,2
国際医療福祉大・院医療福祉・保健医療1,国際医療福祉大・保健・放射線2
以前、微量の放射線を好んで集まる生物がいることを見い出した。ショウジョウバエにおいてもそ のような行動がみられるものか実験を行っていたとき、X線照射をうけたショウジョウバエの卵(幼虫)は、早く羽 化することに気付いた。そこで、低線量照射によってどの程度、羽化までの時間が早くなるものなのかを詳細 に調べた。方法は、Canton?S野生型を用い、産卵後3時間目、48時間目(2日目)、120時間目(5日目)、168時 間目(7日目)、192時間目(8日目)の卵または幼虫に低線量X線(0.15、0.3、0.5、1Gy)を照射し、その後の羽化 までの時間を対照群と比較した。また、雄親だけに照射した時に得られた卵、反対に雌親だけに照射した時の 卵の発生についても調べ、低線量効果が次世代にも伝わるものなのかも調べた。 産卵開始後、168時間目に0.3Gy照射した群においては、対照群より羽化までの時間が10時間早まった。線量 を0.5Gyに上げた時には、この効果はより大きくなった。0.5Gy照射群は、対照群より24時間早く羽化した。しか し、照射時期を遅くして、192時間目に0.5Gy照射した群では、対照群との間に差は見られなかった。また、線量 を1Gyまで上げた照射群においても、この早期羽化効果は観察できなかった。本研究での結果は、低線量域の みに影響が見られるという特異的な変化であることがわかった。 この早期羽化効果は、雌親だけに0.5Gyを照射し、その後3日目に未照射の雄と交配させた群においても観察 できた。つまり、雌親が被曝をした情報は、次世代(卵)に伝わった可能性が考えられた。現在、雄親だけに照 射した群を調べている。
Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.