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Drosophila卵母細胞内においてoskar mRNAの局在と翻訳を制御する RNA結合蛋白質Hrp48の構造活性相関


矢野 環1  松居 靖久2  倉田 祥一朗1  Anne Ephrussi3

東北大院・薬1,大阪母子センター2,EMBL- Heidelberg3


様々な動物種において、卵細胞質の特定領域に局在する母性RNAが初期発生に重要であること が知られている。これらの母性RNAは、翻訳が抑制された状態で移動し、局在した場所でのみ翻訳され機能す る。Oskar (osk)はDrosophila において腹部形成と生殖細胞形成に必須な遺伝子であり、母性RNAの形で卵の後極に局在し、そこで翻 訳される。正常な前後軸形成には、osk mRNAの卵母細胞後極への局在と、それにリンクした翻訳制御が必須である。我々はこれまでに、osk mRNAの翻訳抑制領域に結合する因子Hrp48を単離同定し、その変異体の解析によって、Hrp48がosk mRNAの翻訳を抑制すること、さらに、osk mRNAの卵母細胞後極への局在にも働いていることを証明した。
Hrp48はA/B type hnRNPであり、N末端に2つのRNA結合ドメイン(RRM)、C末端にグリシンリッチドメイン (GRD)を持つ。A/B type hnRNPは種を越えて保存され、それぞれが共役因子と複合体を形成して多機能性を発揮する事が知られてい る。Hrp48がosk mRNAに対して、局在と翻訳抑制という二つの機能を使い分け、かつ互いにリンクさせる分子機構を検討する ために、in vivoにおいてGal4- UASシステムを用いてHrp48の全長、あるいはその一部分を卵母細胞内で強制発現させ、その前後軸形成に 対する影響を調べた。Hrp48全長の強制発現は胚の弱い腹部欠損を引き起こしたが、前後軸形成以外にも欠 損が生じ、Hrp48がosk mRNA以外のmRNAにも働いている可能性が考えられた。これに対して、Hrp48のGRD部分の強制発現では頭 部欠損のみが生じ、内在性のHrp48のoskmRNA翻訳抑制機能を阻害したと考えられた。現在、翻訳抑 制に必須の構造を詳細に検討中である。


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