○兵頭−三浦 純子 山本 隆正 兵頭 亜紀子 上野 直人
基生研・形態形成
原腸形成は、統合された細胞群相互の形態形成運動によって起こる現象で、生物の初期発生に おける三胚葉や胚軸の形成を決定付ける為に必須の過程である。原腸形成期の細胞運動に於いては、Wnt- 11を介するPCP経路が、細胞に極性を与えることで細胞運動を制御していると考えられている。また、Wnt / Ca2+経路が、細胞接着を調整することで原腸形成期の細胞移動を制御することが示唆されている。しかし、こ れらのシグナル伝達経路の構成因子に関する知見はまだ少なく、どのような分子機構を経て形態形成運動に 至るのか、未知の部分が多い。さらに、Wntシグナルだけでは形態形成運動を再現できないこと等から、他にも 原腸形成に関与する経路が存在する可能性が考えられる。そこで我々は、原腸形成の分子機構に迫ることを 目的とし、胚操作が容易で初期発生の研究に適したアフリカツメガエルを用い、原腸形成期の形態形成運動に 直接関与する因子を発現クローニング法によってスクリーニングした。本スクリーニングでは、形態形成運動 における細胞の極性、接着性、細胞骨格の再構築等の様々な局面において機能する因子を多面的に見て単 離できると期待され、形態形成運動の全体像から迫って行くことができると考えている。 まず、アフリカツメガエル初期胚において最もよく形態形成運動を起こす背側帯域から得たmRNAを元にcDNA ライブラリーを作製した。次に、合成mRNAをアフリカツメガエル胚の背側に顕微注入し、胚全体やKeller外植体 の表現型を観察することで、原腸形成期の形態形成運動に関与する因子をスクリーニングした。現在までに、 約700クローンの中から、形態形成運動に関与すると思われる未知、既知を含む43種の候補因子を得た。得ら れた因子については、in situ hybridization法によって原腸形成期の発現を確認した。引き続き進めているスクリーニングの結果と共に、得 られた因子の機能解析についても合わせて報告したい。
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