○桜井 敬之 木村 穣
東海大学遺伝子工学実験動物研究センター,東海大学医学部
受精後の哺乳類卵の細胞質内で生じる母性RNAのポリA鎖伸長現象は、我々が独自に単離した
マウス初期胚発現遺伝子、SSEC-
Dの解析から、初めて見出された。同様の現象は、現在までに7遺伝子で報告されるに至っている。我々のSSE
C-
D遺伝子の解析結果と併せて、このポリA鎖伸長現象は、哺乳類の受精後胚における情報発現制御への関与
を示唆するものである。
我々は受精後胚で、母性RNAのポリA鎖が伸長する現象の全容と生物学的意義の解明を目指すため、まず受
精後ポリA鎖を伸長するマウス母性RNA群のみを濃縮し、それらを網羅的に単離する新規なcDNA
Library作製法を考案した。方法は、マウス受精卵にATP誘導体であるBiotin-
ATPを、ポリA鎖を伸長する母性RNAのみが取り込む条件で導入し、そのRNAをStreptavidin架橋の磁気ビー
ズで回収。得られたRNA群からPCRベースのcDNALibraryを作製するものである。Biotin-
ATPの胚導入方法の検討、Biotin-ATP導入受精卵からのBiotinラベル
RNAの単離法、単離RNAからcDNA増幅法等々の検討を十分した後、このcDNA
Libraryを用いて、約1000クローンの解析を現在までに終了した。そこには既知のポリA鎖伸長遺伝子も存在し
ており、幾つかのRNAブロット解析からもポリA鎖伸長を引き起こしている母性RNAを選別し単離する系を確立
できたと考える。
現在、これらのcDNAクローンについて、ポリA鎖伸長時期の同定と機能や遺伝子構造による分類を目指して
いる。以上の結果を紹介し、今後の展開と応用について議論したい。
Page Copyright (C) 日本発生生物学会 All Rights Reserved.