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マウス胸腺に存在する多分化能を維持した神経堤細胞


山崎 英俊1  坂田 恵美1  國貞 隆弘2  林 眞一1

鳥大・医生命・免疫1,岐阜大・院医・再生2


神経堤細胞は多分化能を有し、色素細胞、神経系細胞等に分化し顔面、心臓及び胸腺の形 成に関与する。胸腺は内胚葉、外胚葉と神経堤細胞により形成され、神経堤細胞は胎生12日胸腺に移 入することが知られている。しかし、神経堤細胞が胸腺でどの細胞に分化し、どのように胸腺の形成に関 与するかはマウスではほとんど報告がない。神経堤細胞の運命決定機構は未だに不明な点が多いが、 神経管から移動直後に大部分の神経堤細胞は分化決定され、多分化能をもつ神経堤細胞は末梢に一部 のみ存在すると考えられている。 今回我々は、マウス胎仔胸腺にどのような分化能を持つ神経堤細胞がいつまで存在するかを検討した。 神経堤細胞の分化決定では色素細胞への分化決定が初期に行われることから胸腺に色素細胞への分 化能をもつ神経堤細胞が存在するかを調べた。胸腺細胞を色素細胞の分化因子エンドセリン3(ET3)の存 在下で培養したところ、胎生15日までの胸腺から色素細胞が誘導できた。これらの細胞が色素細胞前駆 細胞より未熟な細胞から由来することより、他の細胞系譜への分化能について検討した。その結果、色 素細胞と神経系細胞の二つの細胞系譜に分化可能な細胞が胸腺に存在することが判明した。さらに神 経堤細胞特異的に遺伝子発現を誘導、標識できるP0- Cre/Rosa26Rマウスを用いて胸腺にいる多分化能を持つ細胞が神経堤細胞に由来することを確認した。 これらの神経堤細胞が生体内で分化増殖するかを明らかにするために、ET3を胸腺上皮に過剰発現さ せた。これらのマウス胸腺では多分化神経堤細胞が増殖し、正常マウスでは胎生中期に失われる多分化 神経堤細胞が胎生後期まで維持され、色素細胞増多症を示した。 従って胎仔胸腺のような末梢器官にも多分化神経堤細胞が存在し、ET3のような環境因子を発現させる ことで多分化神経堤細胞を分化増殖あるいは維持することが可能となる。


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