[PD1-073]

イモリの精子運動開始機構の特徴


渡辺 俊彦  渡辺 明彦  鬼武 一夫

山形大・理・生物


精子は、放精または射精されることにより運動を開始する。運動開始に関与する外部要因として浸透圧やイオン濃度の変化または卵外被からのシグナル分子が報告されており、それらの要因は種によって異なる。 一般に、両生類精子の受精時における運動開始要因は、体内から淡水中への放精による精子周囲の浸透圧の低下と考えられている。しかしながら、イモリは体内受精を行う。受精は総排泄腔中で精子が直接ジェリー層に媒精されることによって始まり、この際精子の運動が開始される。私たちはこれまでに、イモリ精子の運動開始に関与しうる外部要因として精子周囲の浸透圧の低下、ジェリー層中に含まれるタンパク質因子、一価の陽イオン及び高いpHを報告した。 本研究では、自然環境で予想されるイモリ精子運動開始の調節機構の特徴を検討した。その結果、イモリ精子は低浸透圧下では外液のpHに関わらず運動精子の割合が増加した。一方、ジェリー層中のイオン組成に基づいて再構成した塩類溶液中にジェリー層中のタンパク質因子を含んだ溶液では、pHに依存して運動精子の割合が増加した。この結果は、それぞれの環境で異なる運動開始機構が働くことを示唆する。また、イオンチャネルに対する阻害剤を用いて検討をしたところ、タンパク質因子による精子運動開始はK+チャネル及びCa2+チャネルに依存することが示唆され、特にCa2+チャネルの阻害によってジェリー層上で運動を開始した精子の割合が著しく低下した。これらの結果は、ジェリー層中のイオンがチャネルを介して精子の運動開始に関与することを示す。


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