WC1-2

GATAファクターAms2によるセントロメアヌクレオソームの再編成

○高橋考太 2 , 陳　毅欣 1 , 柳田充弘 2 （ 1 京大院・理学, 2 京大院・生命科学）

• 　分裂酵母のセントロメア特異的ヒストンH3バリアントSpCENP-Aの温度感受性変異 cnp1-1 は、セントロメアのクロマチン形成を阻害し、次の分裂期に染色体の不均等分配を引き起こす。今回、 cnp1-1 変異の多コピーサプレッサー ams 遺伝子4種をクローン化、 ams1 + 、ams3 + 、ams4 + がゲノム中3コピー重複するヒストンH4を、 ams2 + が新規GATA転写因子型zinc fingerタンパク質をコードすることを明らかにした。 ams2 破壊株ではSpCENP-Aのセントロメア局在の顕著な低下、セントロメア特異的クロマチン構造の部分的崩壊が起こり、分裂期における常染色体の高頻度脱落を伴う極めて深刻な生育遅延が起こる。ヒストンH4もしくはSpCENP-Aの増量でこの生育遅延が相補されることから、Ams2はセントロメア形成にヌクレオソームレベルで関与する制御因子かもしれない。面白いことに、野生株細胞中においてもAms2をectopicに増量するだけで、局在能を失った cnp1-1 変異タンパク質をセントロメアへ再ロードすることができた。Ams2は染色体クロマチンが再編成されるS期の前後にクロマチン領域に局在、細胞周期進行に呼応し修飾状態が変化する。驚いたことにAms2は転写因子として働くのみならず、一般に転写不活性な領域と考えられているセントロメアのにもGATAコアDNA配列を介して結合していた。Ams2がセントロメアクロマチンの再編成とそれに伴う関連因子の転写を協調的に制御している可能性について議論したい。

WC1-3

ヒト染色体セントロメアの新規形成とクロマチン再編成

○舛本　寛（名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻）

• 　我々はヒトセントロメア由来特定アルフォイドDNAには新規にセントロメア構造を形成する能力が存在することを示した。ヒト人工染色体を用い新規セントロメア形成に必要なDNA配列の限定を進めた結果、アルフォイドDNA中のCENP-B結合配列（CENP-B box）に2塩基置換を導入するだけでCENP-Bとともに必須なセントロメア・タンパク質群（CENP-A,-C,-E）の新規集合が完全に起こらなくなった。さらに、HeLa細胞核可溶性クロマチン画分の免疫沈殿法によりCENP-A,-B,-Cは同一のクロマチン複合体に含まれること、CENP-BとCENP-Cとの間には直接の相互作用が存在することなどが明らかになった。以上の結果は、アルフォイド配列中のCENP-B boxは新規ヒトセントロメア構造形成に必要であり、CENP-Bの結合を介して機能的セントロメア・クロマチンを集合させる能力が存在することを示している。ところが、人工染色体は100％の効率で形成されるわけではない。サブクローン化により導入アルフォイド配列が宿主染色体末端に挿入された細胞株を得た。このような異所的アルフォイド挿入部にはセントロメア機能蛋白の集合が検出できない細胞が多数生じており、セントロメア機能がエピジェネティックに不活性化されていることが示唆された。このような細胞をヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤で処理を行ったところ、アルフォイド配列に依存してセントロメア機能蛋白群の再集合が起こることが判明した。以上の結果はアルフォイド配列上のセントロメアの活性化と不活性化にはクロマチン構造の再編成が深く関わっていることを示唆している。

WC1-4

DT40 細胞を用いたセントロメア・クロマチンの解析

○深川竜郎（国立遺伝学研究所/総合研究大学院大学/科技団さきがけ研究21）

• セントロメアは染色体分配に本質的な役割を担うDNA-タンパク質の複合体である。高等脊椎動物の染色体では、セントロメア領域がどのように規定されるのかについては未知な点が多くある。細胞遺伝学的に同定されたヒトのセントロメアDNA領域には、すべての染色体に共通して数百bpを基本単位とするDNAが繰り返され、数百kbから数Mbの巨大領域を形成している。「繰り返しDNAそのものがセントロメアの形成に必要である」という報告がある一方で、ネオセントロメアとよばれ、本来セントロメアでない領域が活性化を受けてセントロメアとして働く現象が報告されている。ゲノムの何らかの一次情報を基に特殊なクロマチン構造が形成され、それを複数のタンパク質が認識・集合してセントロメアとして機能すると予想される。我々は、哺乳類細胞に比べて数十から数百倍の高頻度に相同組換えが起こるニワトリB細胞由来のDT40細胞を用いて各種セントロメアタンパク質の機能解析を行うことによって、高等脊椎動物のセントロメアの形成機構の解明を目指している。これまで、キネトコア構築に重要な働きを担うと考えられているCENP-C、新規構成的セントロメアタンパク質CENP-H、分裂酵母セントロメアタンパク質Mis6と相同性を有するタンパク質CENP-I、新規チェックポイントタンパク質ZW10、セントロメアと中心体に局在するNuf2等の条件的ノックアウト株を作成してきた。これらの表現系解析と現在ノックアウトが進行中の各種セントロメア関連タンパク質の変異株の結果をあわせて発表し、高等脊椎動物におけるセントロメアあるいはセントロメアクロマチンの形成機構について議論したい。

WC1-5

動物細胞ゲノムのクロマチン編成・複製ドメインの可視化による解析

○奥村克純, 竹林慎一郎, 田口　寛（三重大学生物資源学部分子細胞生物学研究室）

• 　われわれは、動物細胞核内におけるクロマチンのダイナミックな挙動をゲノムの複製や核内配置との関連性において、FISHをはじめとする可視化法によって様々な階層で解析している。本ワークショップでは、核内ゲノムの複製が、クロマチンの凝縮度が異なる染色体バンド構造とどのような関連性をもつかを、間期核内におけるゲノム複製の順序、空間的配置というクロマチンドメインのレベルから、複製フォークの進行過程のレベルで解析した結果を報告する。細胞に蛍光標識ヌクレオチドを取り込ませ複製中のDNAをラベルする方法によって解析した結果、S期の進行につれて複製部位が核の内部から周辺部へと徐々に移動し、それが分裂期染色体のR/Gバンド構造と密接に関連していた。一方で、複製ラベルしたDNAを細胞核からファイバー状に引き出し、複製フォークの進行過程を高解像度に解析できる技術を確立し、動物細胞ゲノムの複製の進行過程についてモデルを提示した。この方法によって、S期の進行に伴う複製フォークの進行速度を調べた結果、上述の染色体バンド構造との関連性が強く示唆された。この方法により、シングルコピーの特定ゲノム領域の複製部位や、複製フォークの進行の非対称性なども検出され、一連のゲノムの可視化によって、核内のクロマチン編成について複製との関連性において考察したい。

WC1-6

クロマチン構造とリボゾームRNA反復遺伝子の組み換え機構

○小林武彦 1 , 野村眞康 2 , 堀内　嵩 1 （ 1 基礎生物学研究所, 2 カリフォルニア大・アーバイン校・生物化学）

• 出芽酵母のリボソームRNA反復遺伝子（rDNA）は第12番染色体上で約150回並列に繰り返して存在する。このような反復遺伝子はリピート間での相同組み換えにより、そのコピー数が不安定になると予想されるが、実際には150コピー前後で安定に保たれており、そのためのメカニズムの存在が示唆される。我々はヒストン脱アセチル化酵素（Sir2p）の欠損でリピートの安定性が著しく低下することから、クロマチン構造の変化がその安定化に関わっていると考え、特にrDNAのコピー数の調節に必須な領域を中心にクロマチン構造の解析を進めて来た。その結果、1）rDNAコピー数調節に働く組み換えホットスポット（EXP）近傍でSir2pに依存したクロマチンの凝縮がみられること、2）その構造変化は組み換えの直接的な引き金となるDNAの2本鎖切断効率には影響を及ぼさないこと、を見い出した。さらにこのSir2p依存的クロマチン凝縮領域では cohesin による姉妹染色分体の連結が報告されていることから、Sir2pはその連結を介してunequal なsister-chromatid recombinationを抑え、コピー数の変動を抑制していると考えられる。

WC1-7

染色体組換えとクロマチン再編成

○太田邦史（理化学研究所染色体動態制御研究ユニット）

• 　発生分化プログラムや細胞周期プログラムに応じて、クロマチン構造は種々のDNA代謝反応を時間的・空間的に制御している。我々の研究グループでは、分裂酵母の減数分裂期組換えホットスポットとして知られている ade6-M26 遺伝子座において、ORF 5'側に存在するcAMP感応エレメント(CRE)様DNA配列に依存したクロマチン再編成を見出し、これまでにそのメカニズムについて解析を進めてきた。 ade6-M26 遺伝子座における組換え活性化とクロマチン再編成は、いずれもストレス応答キナーゼやcAMP依存性キナーゼ経路によって相反的に制御されていた。また両者は、一群の接合フェロモンシグナル伝達経路に関する因子や減数分裂誘起因子の働きも必要としていた。また、このクロマチン再編成はヒストンアセチル化酵素Gcn5によるヒストン・アセチル化によって促進されており、 gcn5 遺伝子破壊株ではクロマチン再編成に遅延が起きるほか、組換えを開始するDNA二本鎖切断が顕著に低下することが明らかになった。また、分裂酵母染色体に天然に存在するCRE様配列周辺でも類似したクロマチン再編成が減数分裂時に生じることを確認した。以上の結果から、少なくても一部の分裂酵母CRE様配列では、性分化プログラム・シグナルに応じてクロマチン再編成が生じ、組換え開始に必要なDNA切断酵素群が呼び込まれる素地が作り出されることが示唆された。本ワークショップでは、クロマチン再編成の組換えにおける意義についても考察してみたい。

WC1-8

RSCクロマチン再構成因子の生物機能

○土屋英子, 湯川格史, 小山浩史, 井内智美（広島大学大学院先端物質科学研究科細胞物質科学教室）

• 染色体のクロマチン構造を基本とする高度に組織化された構造は、転写、複製、修復、組み換え等の反応に大きな影響を与えている。細胞は生命活動の様々な局面で、染色体構造を変換し、転写装置や複製装置等のDNAへのアクセスを調節している。このような染色体構造の変換には、主としてヌクレオソームを構成するコアヒストン分子の修飾によるものと、ATPの加水分解を伴って染色体構造の再編を行う因子の2種があり、いずれも多種類の蛋白で構成された複合体で作用している。出芽酵母には、後者の再編因子として、そのプロトタイプとして知られるSnf/Swiと、RSCの2種の複合体が存在する。Snf/Swiは糖代謝や接合型変換に関わる一群の遺伝子の転写制御に働き、生育に必須ではない。一方RSCは生育に必須で、またSnf/Swiより核内に多量に存在することから、転写だけでなく広範なDNA代謝反応に働いていると考えられるが、機能の詳細は明らかではない。我々は、RSCの主要サブユニット、Nps1の温度感受性変異株の解析を中心に、RSCの細胞増殖並びに、細胞分化（減数分裂・胞子形成）における働きを調べてきた。本ワークショップでは我々の実験結果を中心に、RSC並びに、ATP依存型クロマチン再構成因子の生物機能について議論したい。

WC1-9

発生分化に伴うDNAメチル化とクロマチン再編成

○浦　聖恵, 石田智咲, 佐伯英昭, 森田奈亜子, 柏木克信, 金田安史（大阪大学医学系研究科遺伝子治療学）

• 　生物の初期発生の過程で、ヒストンの種類や修飾状態は大きく変化し、特に哺乳類では遺伝子の本体であるDNAのメチル化状態が激変することが知られている。しかし、その機構や機能はよく分かっていない。そこで我々はES細胞を発生分化のモデルに用いて、 de novo のメチル化を担うDNAメチル化酵素(Dnmt)3b 遺伝子に焦点を絞って、分化に伴う遺伝子発現とクロマチン構造そしてDNAメチル化パターンの変化を詳細に解析し、 発生分化に伴うゲノムのDNAメチル化を含めたクロマチン再編成の機構を明らかにすることを目指している。
  　Dnmt3b遺伝子は、およそ50kbの範囲に24のエクソンから成り転写開始点はCpGアイランド内に位置する。この遺伝子はES細胞の分化に伴って一過性に発現し、この間に未分化状態で数多く見い出されたDNaseI高感受性部位(HS)は、CpGアイランドの両脇に位置する2箇所を除いてほとんどが消失した。さらにDNAメチル化パターンを見ると、CpGアイランドの外側で分化に伴って領域ごとに異なる早さでメチル化されることが明らかになった。 しかも特定のDnmtによってメチル化パターンが形成される特殊な領域が存在することが見い出された。以上の結果からDnmt3b遺伝子がDNAのメチル化を含んだクロマチン再編成によって発現調節されて可能性が示唆された。このモデルの検証とともに、再構成ヌクレオソームを用いた in vitro のクロマチン再編成の解析結果も合わせて、発生分化に伴うゲノムのクロマチン構造再編成 とその機能について議論したい。

WC2-1

異種生物遺伝子発現系を用いたγ-チューブリンの機能解析

○堀尾哲也 1 , 清水美幸 1 , 谷脇亜希子 1 , 森　知栄 1 , Oakley Berl R. 2 （ 1 徳島大学医学部栄養衛生学, 2 Department of Molecular Genetics and Department of Plant Biology, The Ohio State University）

• 　γ-チューブリンは、微小管形成中心に局在し細胞内の微小管編成を支配している。我々は、様々な生物種のγ-チューブリンを分裂酵母内で発現させ、その機能解析を行っている。ヒトγ-チューブリンは、分裂酵母のそれに替わって機能しほぼ正常な生育を支持する。この知見を利用してγ-チューブリンに直接相互作用するタンパク質遺伝子に変異を持つ株の検索を行った結果、ファルネシルトランスフェラーゼ遺伝子変異株と、α-チューブリン遺伝子変異株を得た。これらの分子は、γ-チューブリンと直接相互作用している可能性が高い。さらに、α-チューブリン遺伝子に変異を導入し、異なるγ-チューブリンを持つ株で発現させる事により、α-/γ-チューブリンの相互作用部位を in vivo でマップする系を開発した。
  　植物（シロイヌナズナ）γ-チューブリンを分裂酵母で発現させた所、植物γ発現株は、高温でのみ生育可能である事が明らかになった。この結果は、γ-チューブリンの機能が動物と菌類のみでは無く、はっきりとした中心体構造を持たない植物においても保存されている事を示している。また、植物γ発現株の細胞形態と微小管分布両者に異常が見られた。この結果は、これらの過程にγ-チューブリンが主要な役割を果たしている事を示している。

WC2-2

Regulation of the microtubule cytoskeleton

○Yixian Zheng（Department of Embryology, Carnegie Institution of Washington）

• My lab is interested in understanding microtubule nucleation and spindle assembly. In the area of microtubule nucleation, we focus on understanding how gamma tubulin ring complex (γTuRC), a key microtubule nucleator, nucleates microtubules and how it is recruited to the centrosome. We have characterized 6 of the 6-8 components of the γTuRC. We have also successfully re-constituted a major sub-complex of the γTuRC. These studies have shed light on the assembly and function of the γTuRC.
  In the area of spindle assembly, my lab as well as other labs have shown that Ran, a small GTPase required for nucleo-cytoplasmic trafficking, can stimulate spindle assembly in mitosis. Recently, we have shown that Ran influences spindle assembly by increasing microtubule rescue frequencies and microtubule motor activities via intermediary cellular factors. We found that at least one of these intermediary factors is importin-beta, an essential receptor for nuclear importing in interphase. Our studies revealed that RanGTPase uses a similar mechanism to regulate nuclear transport in interphase and spindle assembly in mitosis.

WC2-3

高等植物細胞の微小管構築におけるヒストンH1のはたらき

○水野孝一, 堀田　崇（大阪大学大学院理学研究科細胞生物学講座）

• 　高等植物細胞は動物細胞で微小管の構築に重要な役割を担う中心体を保有しない。しかしながらこのような明確な MTOC 構造を持たない高等植物細胞にもかかわらず微小管の構築が正常に行われ、細胞の形態維持や分裂は滞り無く完遂される。それは、植物細胞には動物細胞とはかなり異なる微小管構築の仕組みが存在するからではないかと考えられた。中心体を有しない高等植物細胞はいったいどのような仕組みで微小管構築の制御を行っているのであろうか。間期の核の表面が MTOC 様の機能を有することに着目し、タバコ培養細胞の核を単離し、MTOC として働くタンパクを分離・同定した。驚いたことにヒストンH1が微小管構築の制御を担う機能を有することが確認された。一般にヒストンH1はヌクレオゾーム構造の維持に働くタンパク、いわゆるリンカーヒストンであると理解されてきた。しかしながら、高等植物細胞においてはリンカーヒストンとしてのみならず微小管の構築制御に重要な役割をしているタンパクであることが明らかになった。ヒストンH1存在下で微小管形成反応を行うと多数の星状体様の構造体が形成される。この時、中心にはヒストンH1とチューブリンからなる複合体粒子が集合し、放射状の微小管はチューブリンがその基部に付加することにより伸長することが判明した。また微小管の極性と粒子の動きを調べると粒子はエネルギー 依存的に微小管のプラス端方向に動くモーター様性質を示すことが明らかになった。両タンパクとも本来モータータンパクとして機能するものではないが、複合体を形成することにより全く新しい機能を獲得したという事実は進化の過程でなぜ高等植物細胞が中心体を放棄したのかという課題を理解する糸口になるのではないかと考えられる。

WC2-4

陸上植物の微小管形成中心：事実と問題点

○峰雪芳宣（広島大学大学院理学研究科生物科学専攻）

• 高等植物の微小管は、細胞周期に応じてその存在様式を変化し、生命活動の重要な役割をになっている。間期には間期表層微小管として細胞表層に平行に配向し、細胞の伸長方向を制御し、G2期から前期には、分裂準備帯として細胞表層の特定の領域に帯状に配向し、分裂面の挿入位置を決定する。また、分裂期には紡錘体として染色体の運動に関与し、染色体の分配が完了するとフラグモプラストとして細胞板形成を行い、細胞を二つに分割する。動物細胞では、主な微小管からなる構造（例えば紡錘体や星状体）は中心体（ここでは中心粒を含む構造のみを中心体と定義する）を微小管形成中心として1点から放射状に伸長した形態をしている。それに対し高等植物は中心体を持たないため、先に述べた4つの構造は、一点に微小管が収斂する形態をとらない。例えば、間期表層微小管や分裂準備帯は、細胞表層に微小管が平行に並んだ様式で、1点から放射状にはでていない。紡錘体の場合でも、紡錘体の極は1点に収斂せず、拡散した微小管形成中心になっていると解釈されている。このような植物型の微小管構築はどのような機構で行われているのか、まだ不明の点が多い。本公演では、（1）動物型と高等植物型の中間型が見られる下等陸上植物の微小管構造とガンマチューブリンの分布、および（2）加圧凍結した植物材料を使った超高圧電顕2軸トモグラフィー法による表層微小管の端構造の解析という私が関与している2つの異なるプロジェクトで得られた最近の結果と過去の文献を元に、陸上植物の微小管構築機構についてどこまでが明らかになっており、何が問題なのか整理して紹介し、 ` なぜ植物は中心体をすてたか？ ' という細胞学の古典的な問題ともからめて議論する。

WC2-5

分裂酵母スピンドル極体における微小管形成：Polo-like kinaseとribonucleotide reductase R1による制御

○升田裕久 1,2 , 宮本留美 1 , 平岡　泰 1,2 （ 1 通信総合研究所関西先端研究センター生物情報グループ, 2 科学技術振興事業団）

• 分裂酵母のスピンドル極体(SPB)の微小管形成能力は分裂期の開始とともに活性化される。この活性化は間期にすでにSPB上に存在している不活性型のガンマチューブリン複合体の活性型への変換に依存する。私たちは、以前、再構成系を用いて、間期細胞の不活性型SPBがXenopus卵M期抽出液で活性化されることを示した。抽出液のゲル濾過カラムによる分画により、主要活性が160-220kD画分に、弱い活性がより低い分子量画分に見られた。主要画分中の活性化因子としてribonucleotide reductase のラージサブユニットR1を同定した。今回、PoloキナーゼのXenopus ホモログであるPlx1がもう一つの活性化因子として働くことを見いだした。R1, Plx1による活性化は、分裂期抽出液による活性化に比べて低いが、R1, Plx1を同時に加えることによってより高い活性を示した。R1はPlx1によってリン酸化を受けないことから、ガンマチューブリン複合体に結合するR1と、複合体を修飾するPlx1の両者の協同的な働きによって、活性型複合体が形成されることが示唆された。現在、Plx1によってリン酸化される基質の同定を行っている。

WC2-6

出芽酵母γチューブリンの多様性の解析

○紅　朋浩（名古屋大学大学院医学系研究科附属病態制御研究施設医真菌研究部門）

• 酵母の紡錘体極はSpindle Pole Body (SPB)と呼ばれ、この仲間特有の構造をとる。動物細胞の中心体との形態の違いは明白であるが、同じSPBでも微細構造レベルでは菌種によりかなり違いがあると言われる。γチューブリンはそれら中心体やSPBの基本的な成分であり、普遍性の高いタンパクであるが、出芽酵母のγチューブリンについては例外的に極めて保存性が低い。また一般にγチューブリンは様々なタンパクと結び付いて大きな複合体を形成しているが、出芽酵母では、二種類の複合体タンパクとの比較的小さな複合体が基本単位となって機能していると思われる。私はこのような特殊な側面を持つ出芽酵母γチューブリンを研究対象としているが、これらの多様性や単純さを利用することで、γチューブリンのより基本的な部分が探れないかと考えている。出芽酵母γチューブリンの多様性の特徴を明らかにするため、いくつかの出芽酵母のγチューブリン様遺伝子の配列を比較し、一次配列上、あるいはチューブリンの立体構造上での特徴を調べた。その結果、多様な中にも強く保存している配列があり、それらはチューブリン、あるいはγチューブリンを特徴付ける配列であることが示唆された。保存性の高い領域の一つ、T7ループ領域の保存配列にアミノ酸置換を導入しその表現形を調べたところ、温度感受性を示し、制限温度下ではG2/M期に停止した。保存配列に注目することで機能領域の解析を効率的に行なえる可能性が示された。他方、出芽酵母を用い、異種間での発現を利用した機能領域の解析も試みている。本講演では、γチューブリンの核局在と微小管阻害剤の作用という二点について、機能領域解明へのアプローチを紹介する。

WC2-7

γ-チューブリンリング複合体をセントロソームにつなぎ止める因子の探索

○川口真一 1 , Zheng Yixian 1,2 （ 1 Department of Embryology, Carnegie Institution of Washington , 2 Howard Hughes Medical Institute ）

• 　動物細胞の γ-チューブリンリング複合体 (γTuRC) はセントロソームに局在し微小管重合を促進する。酵母のTub4p 複合体は、γTuRCを構成する小サブユニットと相同である。動物細胞を用いた研究によるとセントロソームに局在する γ-チューブリンは全体の約20％程度であり、80％は細胞質中に存在する。これら細胞質中の γ-チューブリンは、M期への移行にともなってセントロソームにリクルートされ、その結果、セントロソームに由来する微小管の数が増加する。
  　私どもはショウジョウバエを材料として、γTuRCのリクルートとアンカーに寄与する分子の同定を試みている。この目的のために、従来の蛋白質精製法と候補蛋白質の解析を平行して進めている。高塩濃度で不活性化したセントロソームを再活性化できる活性を指標として、この因子の粗精製と同定を試みた。これまでに、ポリエチレングリコールによる蛋白質分画、ショ糖密度勾配遠心法、及び、イオン交換カラムクロマトが有効であることがわかってきた。また、出芽酵母ではSpc110がTub4p 複合体をspindle pole bodyにつなぎ止めていることから、Spc110 の相同蛋白質が γTuRCのアンカー因子であると期待される。最近、Spc110と部分的ながらも有意な相同性をもつ蛋白質（Kendrin）が哺乳動物でも同定された。この部分配列はショウジョウバエの機能未知蛋白質の中に見つけられた。しかし、部分配列以外は有意な相同性は見られず、これらの蛋白質が相同な機能を担っているかどうか注目される。

WC3-1

タンパク質の品質管理と小胞体ストレス応答

○河野憲二（奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター動物細胞工学部門）

• 　動物細胞内で合成される全タンパク質の約3分の1が膜タンパク質や分泌タンパク質であり、小胞体膜上のリボソームで合成される。合成されたタンパク質は、小胞体内でシャペロン等の助けにより高次構造形成を行い、そののち輸送小胞により目的の場所に運ばれていく。このことから小胞体はタンパク質の高次構造形成をする場としても非常に重要なオルガネラであることがわかる。もし構造形成がうまくいかない異常タンパク質が、膜に発現したり分泌されたりした場合には、これらの異常タンパク質が細胞間相互作用などに重大な影響を与えることが予想される。このため真核生物は、小胞体から先の経路には高次構造異常なタンパク質を出さない厳密な管理機構（小胞体におけるタンパク質の品質管理機構）をもっている。グルコース飢餓、薬剤摂取、カルシウムイオンの小胞体からの放出、ウィルス感染等の小胞体ストレスにより、小胞体内に構造異常タンパク質（unfolded proteins）が蓄積すると、細胞は(1) 小胞体シャペロン遺伝子群の転写レベルでの誘導（unfolded protein response: UPR）、(2) タンパク質合成の抑制、(3) 変性タンパク質の分解（ER associated protein degradation: ERAD）、という3つの手段でこの小胞体ストレスに対抗する。これらはすべて小胞体に蓄積している変性タンパク質の量を減らす方向に働くもので、細胞が生存していくために非常に合理的な細胞応答と考えられる。ここでは、小胞体内に異常タンパク質が蓄積したことを、細胞はどのようにして感知しているのか、動物細胞における小胞体ストレス応答経路はどのように厳密に制御されているのかについて紹介する。

WC3-2

蛋白質の品質管理における糖鎖修飾の意味

○徳永文稔（姫路工業大学理学部生命科学科）

• 血液凝固制御因子のプロテインCは、ビタミンK存在下でγ-カルボキシル化を受けると正常に分泌されるが、抗血栓薬(ワルファリン) 投与によりこの翻訳後修飾が不全になると小胞体関連分解（ERAD）機構を通してプロテアソーム分解される。ビタミンK下のプロテインCは、カルネキシン・カルレティキュリンとモノグルコース型糖鎖を介して一過性に会合したのち、γ-カルボキシル化の完成に伴い分泌されるが、小胞体グルコシダーゼ阻害剤（カスタノスペルミン(CAS)）存在下で、これらシャペロンとの会合を阻止すると、γ-カルボキシル化は促進されるものの分泌は遅延した。これは、カルネキシン・カルレティキュリンがプロテインCの品質管理に重要であることを示唆している。一方、ワルファリン下プロテインCのERADはCASの影響を受けず、小胞体マンノシダーゼI阻害剤によって強く阻害されたことから、異常プロテインCのERADにはカルネキシン・カルレティキュリとの会合は必須ではなく、Man8B型糖鎖の産生が重要と考えられた。さらに我々は、ERADに伴う逆行輸送を明らかにするため、プロテインCとGFPとのキメラを作製し、ワルファリン下で細胞内移行を解析した。その結果、N型糖鎖をもつキメラは小胞体から逆行輸送後、プロテアソーム活性を抑制すると核内に凝集体を形成したが、糖鎖を持たないGFPキメラはワルファリン下でも分泌された。以上の結果より、N型糖鎖は新生蛋白質の品質管理や、折れたたみ異常蛋白質の識別、逆行輸送に深く関与すると結論した。さらに最近、N型糖鎖はユビキチン化にも関連することが明らかになったので、併せて紹介したい。

WC3-3

小胞体関連分解(ERAD) に関与する、EDEM 蛋白質の機能解析

○細川暢子（京都大学再生医科学研究所細胞機能調節学部門）

• 小胞体で新生された蛋白質は、正しくfold したもののみが分泌され、misfold したものは分泌されないように細胞内に留められて細胞内分解を受ける。そして近年、このようなmisfold 蛋白質の多くが、小胞体関連分解(ERAD)と呼ばれる機序によって分解されることが明らかにされてきた。小胞体内のsoluble 蛋白質や膜蛋白質が、細胞質に逆行輸送された後、cytosol のプロテアソームによって分解されるのである。また、小胞体で生合成される蛋白質の多くは糖蛋白質で、アスパラギン残基にハイマンノース型の糖鎖を付加される。糖蛋白質がERAD の系で分解される場合には、この糖鎖のマンノースのトリミング状態が重要で、マンノースが9個だとmisfold 蛋白質は分解されないが、8個にトリミングされると (Man8)、これがシグナルとなって分解されることがわかっていた。私たちは、Man8 フォームのmisfold 蛋白質を認識してERAD の系にもっていく働きをする、Man8 レクチンと考えられる蛋白質をクローニングして、EDEM (ER degradation enhancing α-mannosidase-like protein) と名付けた。EDEM 蛋白質は、細胞に過剰発現させると、基質となるmisfold した蛋白質の分解を促進した。またこの時、分解のシグナルとなるハイマンノース型糖鎖のMan8 フォームへのトリミングは、小胞体に存在するER mannosidase I (ER ManI)によって担われている。私たちは、基質蛋白質がERAD によって分解されるに当たり、EDEM とER ManIの作用機序が異なり、両者は相加的な働きを示すことを明らかにした。さらに、小胞体から蛋白質が細胞質へと逆行輸送される時、蛋白質はtranslocon を通ること、この時calnexin が重要な働きをしていることが報告されているので、現在私たちは、EDEM とcalnexin の機能的関連性について検討を行っている。

WC3-4

NOによるアポトーシスは小胞体ストレス経路を介する

○後藤知己 1 , 親泊政一 1 , 森　和俊 2 , 森　正敬 1 （ 1 熊本大学医学部分子遺伝学講座, 2 京都大学大学院生命科学）

• 一酸化窒素（NO）は、多彩な作用を持つ生理活性分子であるが、過剰に産生されると細胞はアポトーシスに陥る。NOによるアポトーシス誘導機構はDNA障害-p53を介する経路などいくつか云われているが、今だその詳細は明らかではない。今回我々は小胞体（ER）ストレス経路を介するNO依存性アポトーシスの新しい経路を発見した。
  膵β細胞やマクロファージ系RAW細胞をNOで処理するとアポトーシスがおこる。このとき、DNA障害やp53の蓄積は認められず、DNA障害-p53経路以外の経路が働いていると考えられた。p53を欠失させたミクログリアにおいてもNOによるアポトーシスが観察された。一方、ERストレスにより誘導され、アポトーシスに関与することが知られている転写因子CHOPが誘導されることを見い出した。RAW細胞やCOS-7細胞にCHOPを強制発現させるとアポトーシスがおこった。さらに、CHOPノックアウトマウスの膵β細胞や腹腔マクロファージはNOによるアポト－シスに対して抵抗性を示した。次いでCHOPの上流を解析した。
  ER膜結合タンパクATF6は、ERストレスによって限定分解を受けて活性化され、転写因子としてERシャペロンやCHOPの誘導などに働く。NO誘導性アポトーシスにおいてCHOPの誘導に先立ってATF6の活性化が認められた。RAW細胞およびCOS-7細胞に活性型ATF6を強制発現するとアポトーシスをおこしたが、このアポトーシスはCHOPのdominant negative formの共発現によって抑制された。以上の結果より、NO誘導性アポトーシスにおいて、ATF6-CHOPを介する経路が働いていることが明らかになった。今後はCHOPより下流の経路を明らかにしたい。

WC3-5

家族性パーキンソン病と小胞体ストレス

○高橋良輔（理化学研究所・脳科学総合研究センター・運動系神経変性研究チーム）

• 常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソニズム（AR-JP）は40才以下で発症するパーキンソン病様症状を主体とする疾患で、神経病理学的には黒質・青斑核の選択的変性を特徴とする。病因遺伝子パーキンはユビキチンリガーゼ（略称：E3）という分解されるべき蛋白質をユビキチン化し、プロテアソームによる分解へと導く役割を持つ酵素である。AR-JPでは変異によってパーキンのE3活性が欠損することから、パーキンが本来分解すべき基質がドーパミン神経に蓄積し、神経変性を引き起こすと考えられる。すなわちパーキンの基質を明らかにすることがAR-JPの発症メカニズム解明への鍵と考えられるに至った。我々はAR-JPの発症に重要な役割を果たすと考えられるパーキンの基質、Gタンパク共役型受容体であるパエル受容体（Pael; P arkin a ssociated e ndothelin receptor- l ike）の同定に成功した。パエル受容体は正常な形に折れたたむこと（フォールディング）が難しいタンパク質であり、フォールディング不全のパエル受容体は、通常パーキンの作用ですみやかに分解される。パエル受容体の分解がストップすると、小胞体に異常蓄積し、細胞は小胞体ストレスによる細胞死に陥る。AR-JPの患者脳でもパエル受容体は分解されずに蓄積していた。またパエル受容体は、脳のオリゴデンドログリア細胞に強く発現し、一般的には神経細胞での発現は乏しいが、AR-JPの病変部位である中脳黒質のドーパミン神経では例外的に強く発現していた。これらの事実から、AR-JPではフォールディング不全のパエル受容体の小胞体への異常蓄積により、ドーパミン神経が選択的に細胞死に陥って発症に至るのではないかと考えられる。

WC3-6

アミロイドタンパク質apoA-IIの線維構造への変換と伝播

○樋口京一（信州大学医学部附属加齢適応研究センター脈管病態分野）

• 　生理的機能を持つタンパク質が、突然変異、老化、代謝異常等の原因で微細な線維（アミロイド線維）へ会合し組織へ障害を与える疾患の総称がアミロイドーシスである。アミロイド線維形成の機構はまだ充分には明らかになっていないが、アミロイドタンパク質の溶液にアミロイド線維を加えると線維を核として線維の急速な伸長が起こる反応（核依存性重合反応）が重要である。従来アミロイドーシスはプリオンに代表される伝播性（transmissible）とその他の非伝播性(non-transmissible)アミロイドーシスに分類されてきた。我々は非伝播性とされてきたマウスアミロイドーシス（apoA-IIがアミロイド線維；AApoAIIを形成し全身に沈着する）での線維形成機構を、特に［伝播］に注目して検討してきた。外部からAApoAIIアミロイド線維が侵襲することによってアミロイドーシスの伝播が成立することは、1）アミロイド線維の投与（静脈中、腹腔内、消化管内）でアミロイドーシスが誘発される、2）同一ケージや飼育室内で飼育された動物間でのアミロイドーシスの水平伝播が起こる、3）アミロイドーシスを発症した母親から生まれた子供では発症が促進する垂直伝播が起る、などの事実から証明され、プリオン以外のアミロイドーシスでも、異常構造タンパク質の侵入によるタンパク質の品質管理の破綻が生じていることを示した。各種アミロイド線維とアミロイドタンパク質間の相互作用には共通性と特異性が存在する。各種アミロイド線維は複数のアミロイドーシスを誘発できるが、誘発力には差が存在し一次構造が一致した時に最大となる。タンパク質構造の伝播という概念を基にして、細胞生物学的アプローチと動物個体を用いたアプローチを同時に進めることが必要である。

WC3-7

β2ミクログロブリンのフォールディングとアミロイド線維形成

○後藤祐児（大阪大学蛋白質研究所）

• 【目的】蛋白質のアミロイド線維形成は、さまざまな疾病で見られる。これらの多くでは本来機能的な蛋白質の立体構造が不安定化することによって、アミロイド線維が形成される。β2ミクログロブリン（β2m）は、長期血液透析患者でしばしばアミロイド線維を形成し障害をおこす。メタノール資化酵母で発現したβ2mを用いて、その構造安定性やアミロイド線維の形成機構を調べた。
  【結果と考察】β2mは1本の分子内ジスルフィド結合をもつ。これを還元切断した還元β2mを作製し、pH 8.5での構造安定性を酸化型のβ2mと比較した。ジスルフィド結合を還元すると安定性は低下するものの、変性剤が存在しない条件では、酸化型β2mとよく似た構造をとることがわかった。他方、酸化型β2mがアミロイド線維を形成するpH 2.5で還元型形成反応を比較したところ、還元型β2mはアミロイド線維は形成できないが、きわめてフレキシブルな細い線維構造をつくることがわかった。ジスルフィド結合の役割を明らかにするため、多次元NMRを測定したところ、ジスルフィド結合の還元に伴い、分子のダイナミクスが高まっており、これによって強固な線維構造が形成できなくなることが示唆された。また、アミド水素の重水素交換、ジメチルスルホキシドによる溶解、核磁気共鳴測定を組み合わせて、酸化型β2mのアミロイド線維の二次構造を解析したところ、アミロイド線維では、天然構造でのループ領域もβシートを形成していることが示された。
  【文献】(1) Ohhashi et al. J. Biohem., 131, 45-52 (2002); (2) Kozhukh et al. J. Biol. Chem., 277, 1310-1315 (2002)

WC4-1

VISUALIZATION OF PHOSPHOLIPID AND PHOSPHOINOSITIDE METABOLISM IN CELLS

○Glenn Prestwich（Department of Medicinal Chemistry and Center for Cell Signaling, The University of Utah）

• Cells signal through lipids produced by phospholipid (PL) and phosphoinositide (PIPn) metabolism that involve three enzymatic processes: (i) ester and phosphodiester hydrolysis by phospholipases (ii) monophosphate hydrolysis by phosphatases, and (iii) phosphorylation of hydroxy groups by kinases. In this presentation, I explore three approaches to understanding the dynamics and locations at which these elaborately choreographed changes occur within cells. First, new chemically-synthesized PIPn and PL immunogens have been used to produce lipid-selective antibodies. The applications of monoclonal anti-PI(3,4,5)P3 IgM and anti-PI(4,5)P2 IgMs will be described in stimulated and unstimulated neutrophils and fibroblasts; applications in cancer immunohistochemistry will also be illustrated. Second, the intracellular delivery of PIPns using a novel carrier has been developed and used to visualize (i) PLC-mediated calcium flux, (ii) cell polarization by PI(3,4,5)P3 that mimics chemokine-induced motility, and (iii) intranucleolar distribution of a novel PI(5)P-binding PHD protein involved in chromatin remodeling. Third, a novel fluorogenic substrate for phospholipase A2 has been developed and used for real-time PLA2 activity measurements, with 20-fold increase in fluorescence upon hydrolysis. This substrate can be delivered into living cells using small-molecule carriers, and the spatial and temporal changes in PLA2 activity can be visualized by confocal microscopy.

WC4-2

PKCと脂質シグナルのイメージング

○斎藤尚亮, 白井康仁（神戸大学バイオシグナル研究センター・分子薬理分野）

• Protein kinase C (PKC) is known to be acivated by lipid mediators and also play an important role in various cellular signal transductions. As PKC consists of multiple subtypes, it is important to identify the individual function of each PKC subtype for understanding the complicated roles of PKC in various signaling pathways. Using GFP-tagged PKC subtypes, we have analyzed the translocation of PKC in living cells and demonstrated the subtype-specific translocation of PKC. Furthermore, the activation of each subtype through different pathways induces distinct translocations resulting in distinct cellular responses. To elucidate the targeting mechanism of PKC, we further analyzed: 1) spatio-temporal translocation of PKC subtypes in phagocytosis, 2) the domains responsible for the subtype-specific translocation induced by various lipid signals, and 3) PKC tageting in the brain of Tet-regulated bitransgenic mice expressing GFP-tagged PKC. These results showed that subtype- and cell-specific PKC targeting is very important for the association with PKC substrate and also for the modulation of cellular functions. To elucidate the molecular function of PKC subtypes within cells, it is necessary to analyze the targeting mechanism of PKC subtypes in living cells and tissues.

WC4-3

生細胞における細胞内情報伝達の1分子解析

○小林　剛 1 , 村上瑞奈 1,2 , 川崎拓実 2 , 吉村昭彦 3 , 楠見明弘 1,2 （ 1 科学技術振興事業団ERATO楠見膜組織能プロジェクト, 2 名大院理・生命理学, 3 九大・生体防御）

• 　最近、生きた細胞において、シグナル伝達分子の挙動や相互作用・活性化を1分子レベルで見ることが可能になってきた。細胞内のシグナル伝達は、全体の中のほんの一部の分子が反応・相互作用して成り立っており、しかも、空間的にも時間的にも巧妙に制御されている。1分子レベルの解析では、すりつぶしては失われてしまう時間・空間分解能で、平均の中に隠されていた少数派の重要な情報を得ることができるので、細胞内情報伝達系のネットワークの働き・成り立ちを理解するための強力な手段となり得る。
  　例えば、通常のアッセイ系で多数分子を平均して見た場合には、活性化が1～数分間続くように見えても、個々の分子のレベルで見てみると、1秒ほどの活性化しか起きていない例が、我々の最近の研究で頻繁に見つかってきた。すなわち、全体の活性化は、個々の分子の短い活性化の積分によって成り立っていることがわかる。個々の分子の活性化時間＝全体の活性化時間とするシグナル伝達のシステムでは、活性化と不活性化の両方を制御して反応時間・強度を決めなければならない。しかし、短い活性化時間の積分を用いる場合は、オンの回数・頻度だけをいじれば済むのであり、細胞にとって効率的である。しかも、そのシグナル分子が癌遺伝子産物であるような場合、不活性化の制御に失敗して暴走させないように、活性化したら即座に不活性化するようにしておくことは重要な安全システムである。
  　本講演では、主に、細胞外の刺激によって活性化するRas-Rafのシグナル伝達の解析例についてお話したい。

WC4-4

Dynamic imaging of cellular functions

○宮脇敦史（理化学研究所脳科学総合研究センター細胞機能探索技術開発チーム）

• Signal transduction cascades involve multiple enzymes and are orchestrated by specific protein-protein interactions. Such dynamics is revealed by optical means such as fluorescence readout. One of our approaches is to use two GFPs of different colors to permit fluorescence resonance energy transfer (FRET), which is sensitive to the relative orientation and distance between the two fluorophores and alters the ratio of their emissions, an ideal readout for fast imaging and confocal microscopy. Cameleons are genetically-encoded fluorescent indicators for calcium based on FRET. Another approach is to use circularly-permuted GFP (cpGFP), which is sensitive to environmental changes. We have created calcium-sensitive cpGFP, pericam. Because cameleons and pericams can be targeted genetically and imaged by our newly-developed avant-grade microscopy, they offer great promise for monitoring calcium in whole organisms, tissues, organelles, and submicroscopic environments where measurements were previously impossible. We are extending optical methods to develop new indicators for visualization of cellular functions, which are currently assayed by grinding millions of cells. These technologies will allow us to disentangle complex interplays among many cellular events.

WC4-5

リン酸化反応のイメージング

○稲垣昌樹 1 , 安井善宏 1 , 河尻愛恵 1,2 （ 1 愛知県がんセンター研究所発がん制御研究部, 2 名古屋大・院・医・病理病態）

• 　近年、細胞内シグナル伝達経路が次々と同定されてきた。しかしこれらのシグナルがいかにして多種多様な細胞反応を調節するかは、大きな謎である。この調節は個々のシグナリングが多様な下流分子を活性化しうる能力を内在しながらも、状況に応じて活性化される分子が特異的に選択されることによりなされると考えられる。
  　我々は1990年に世界に先駆けてペプチドをリン酸化して作製したリン酸化ペプチドを抗原とすることで部位特異的抗リン酸化ペプチド抗体の作製に成功した。我々はこれら抗リン酸化ペプチド抗体群を用いることで、重要なシグナル分子であるキナーゼ（Cキナーゼ、CaMキナーゼII、cdc2キナーゼ、Rhoキナーゼ、Aurora Bキナーゼ）が細胞周期の進行や細胞の刺激応答に伴っていかに細胞骨格・中間径フィラメント蛋白質のリン酸化を行うかを検討し、キナーゼの基質選択の特異性と多様性がいかに制御されているかについていくつかの知見を得た。本ワークショップでは細胞質分裂時のRhoキナーゼとAurora Bキナーゼの時間的・空間的な細胞骨格・中間径フィラメント蛋白質のリン酸化反応のイメージングとその生理的意義について解析した結果を中心に紹介したい。