[SF06]

circularly permuted GFP を用いたタンパク質間相互作用のリアルタイムイメージング法の確立とその発生学への応用


永井 健治, 水野 秀昭, 沢野 朝子, 宮脇 敦史

理研・脳センター・細胞機能探索技術開発チーム


近年、様々な発生現象が分子レベルで解き明かされつつある(と思われている)。しかしながらそのほとんどが遺伝子の gain of function および loss of function の実験系に対して組織学的、分子生物学的、生化学的解析を行い、その結果から遺伝子(産物)間のヒエラルキーを明らかにしているにすぎない。発生現象は空間的にも時間的にも非常にダイナミックであることから、その包括的理解(どの細胞のどの領域でいつタンパク質のリン酸化が起きているのかなどを細胞や胚の形態学的変化と同時に観察、理解する)は上述の解析系では達成困難であり、分子の挙動を生きた状態で実時間観測する解析手段が必要となる。
 今回我々は、circularly permuted GFPを用いることによりタンパク質の相互作用を蛍光の変化という形で捕らえることができる技術を開発したので報告する。circular permutationとは、あるタンパク質の内部に新たにN末とC末を作成し、もとのC末とN末を適当なリンカー配列で繋ぐ変異である。我々はpH-insensitiveなyellow shifted GFP variant (10C Q69K) を基にcircularly permuted YFP (perYFP) を作製し、新たなN末とC末にカルシウム依存的に相互作用するカルモジュリン(Xenopus CaM)とM13 ペプチドをつなげた。このキメラ蛋白質(Pericam)はカルシウムの存在/非存在で蛍光強度が約10倍変化した。これは perYFP がもとの YFP(10C Q69K)に比べ立体構造の変化を受けやすいためであると考えられる。次に、Pericam を HeLa 細胞に発現させたところ、ヒスタミン刺激によって起こる急激なカルシウム濃度の上昇とその後に続くカルシウムオシレ−ションを観察することができ、細胞内カルシウム指示薬としてのPericamの有効性が明かとなった。従来、発生過程における個体レベルでのカルシウムシグナリングはあまり解析されていない。これは細胞または組織特異的にしかも効率よく導入できる指示薬がなかったからである。現在 Pericam を用いて Xenopus 初期胚でのカルシウムシグナリングを解析中であるのでそちらもあわせて報告する。また circularly permuted GFP を用いたタンパク質間相互作用のリアルタイムイメージングの有用性とその発生学への応用に関し考察する。


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