○藤澤 敏孝
国立遺伝研・発生
腔腸(刺胞)動物ヒドラは、単純な体制と、強い形態形成、再生能力を持つ。ヒドラの発生・再生を司るシグナル分子を組織的、網羅的に分離し、機能解析を行うことを目的とし、私たちは数年前から研究を進めている。現在までに、日本産チクビヒドラ
(Hydra magnipapillata) から約500種のペプチドを単離し、約400種のアミノ酸配列解析を行った。そして40種の完全構造を決定し、天然と同一構造を持つペプチドを大量合成し、機能解析に用いている。またペプチドの前駆体タンパクをコードする遺伝子10種を分離し、ペプチドを特異的に識別する抗体14
種を作成し、発現解析その他に用いている。
今迄に、ヒドラのパターン形成に関与するペプチド4
種を同定した。(1)Hym-346は体軸の位置価を減少させ,足部再生を促進する。(2)
Hym-323
も体軸の位置価を減少させ,足部再生を促進する。しかし、両ペプチドの発現領域は異なる。一方、Differential
Display-PCR解析によると、両ペプチドは共通する遺伝子の発現を抑制する。従って、両ペプチドは同一経路で働くと考えられる。(3)Hym-301
は頭部(触手)形成を制御する。(4) Hym-330 は出芽を促進する。
その他、Hym-355は神経細胞分化を促進し、PWファミリーは神経細胞分化を抑制する。また近縁カイウミヒドラ
(Hydractinia echinata)
の初期発生を制御するペプチド数種も同定されている(本大会杉山他発表参照)。
これらの分子全ては、アミノ酸残基数 50
以下のペプチドである。一方,ヒドラでもWntTGF-betaシグナル系の存在が報告されている。腔腸動物発生におけるペプチドの役割と,高等動物で明らかにされているシグナル系との関連についても言及する。
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