[ SB06 ]

四肢再生時に現われる再生芽間充識細胞の幹細胞としての機能とそれを生み出す仕組


西川 慶子1,4, 田澤 一朗2, 辻 咲織1, 関田 陽子3, 吉里 勝利2,3

広島大学・理・再生生物1, 広島大学・理・両生類研究施設2, 広島大学・理・発生生物3, 科技団・さきがけ4


有尾両生類(イモリなど)は、成体においても優れた再生能力を持ち続ける例外的な脊椎動物である。四肢の再生においては、切断端に作られる未分化で多分化能を持つ再生芽間充識細胞(幹細胞様の細胞、以下再生芽細胞とする)が重要な役割を果たすと考えられている。再生能 力に劣る哺乳類では再生芽の形成がみられないことから、このような再生芽細胞の形成の有無が再生能力を決める一つの要因だと言える。特に有尾両生類の場合、多分化能を持つ再生芽細胞は筋肉から(おそらく脱分化によって)作られると考えられている。そこで我々は、再生芽 細胞が筋より生み出されるメカニズムを明らかにするための1つのアプローチとして、切断端付近の筋で発現の変化する遺伝子のクローニングを試みた。その結果、低分子量Gタンパク質スーパーファミリーに属するrad (ras associated with diabetes)のイモリホモログをクローニングすることができた。この遺伝子は未切断肢では発現が認められないが、切断後4時間で上昇する。この遺伝子の発現は筋の脱分化とよく一致したパターンを示し、再生芽形成に関与する可能性が示された。
前述したように有尾両生類 は生涯優れた再生力を持つが、それとは対照的に無尾両生類(ツメガエルなど)は変態過程の間に再生力が低下する。成体のツメガエルは再生芽を形成するが、再分化してくる再生体は肢特有のパターンを持たない主に軟骨から成るスパイク状のものである。そこで我々はもう1つ のアプローチとして、完全な再生力を持つ有尾両生類と不完全な再生力しか持たない無尾両生類の再生芽を比較した。その結果2つの動物の再生芽の間で、未分化な状態の異なること(Idをマーカーとして)、筋の脱分化によって多分化能を持つ再生芽を生み出すポテンシャルの異 なること(トロポミオシンをマーカーとして)を明らかにした。


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