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マウス精巣形成過程における中腎細胞移動の制御に対するSry機能の解析


西野 光一郎, 山内 啓太郎, 内藤 邦彦, 東條 英昭

東大院 農・生命 応用遺伝



 哺乳類において、生殖巣の性分化は、生殖巣の発達期のごくわずかな期間に限られて起こる。この時期に雌雄で特異的な性決定関連遺伝子群が発現し、これらの相互作用により性が決定されると考えられている。この中で、精巣決定因子としてSRY遺伝子が知られてい るが、このSRY遺伝子は、生殖巣の性決定期に一過性に発現し、精巣への分化の引き金として働くと推論されている。しかし、現在までSRYの有力な下流候補遺伝子は報告されていない。
 マウスにおいて性決定関連遺伝子群が発現する性決定時期の未分化生殖巣において、隣接する中腎から雄性生殖巣へ細胞が移動する現象が報告された。この移動細胞は精細管構造の形成に関与し、精巣形成に重要な役割を果たしていることが示唆されているが、詳細な解析はなさ れていない。
 我々はこの雄性生殖巣特異的な中腎細胞の移動現象を再現し、細胞移動を経時的に観察できるEGFP-Tgマウスを用いた生殖巣/中腎器官共培養系を樹立した(第32回日本発生生物学会)。この器官共培養系を用いて中腎からの移動細胞のみを単離、回収し、中腎移動細胞の詳細な特 性とSryによる移動細胞の制御の可能性について検討した。
  単離、回収した中腎移動細胞を用いた培養実験の結果から中腎移動細胞には少なくとも二つの細胞集団、一つはmyoid cellの集団であり、もう一つはLeydig cellを含む間質細胞系の集団があることが示唆された。
 さらに、単離、回収した中腎移動細胞をSry遺伝子を強制発現させた培養細胞と共培養することでSryの発現 と中腎細胞移動との相互作用について検討した結果、Sry の発現が直接移動細胞の移動、増殖に関わっていることを示し、Sry の下流カスケード遺伝子の一つとしてTIMP-3が関与していることが示唆された。以上、詳細な解析の結果について報告する。


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