10年目の見直し「日本発生生物学会の歩みと将来」

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10年目の見直し「日本発生生物学会の歩みと将来」

10年目の見直し「日本発生生物学会の歩みと将来」

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第50回大会記念特別企画「日本発生生物学会の歩みと将来」
日時:2017年5月11日(木)18:30~20:30
会場:タワーホール船堀 Room C


  1. 本学会の歴史を振り返る
  2. 活動の変遷(学会運営、英語化、国際化)
  3. DGDの過去、現在
  4. 発生生物学会の現状の課題
  5. 各学会からのコメント(学会運営、法人化、年会運営(共催))

(阿形) それでは皆さま、よろしいでしょうか。今日のメインイベントに向けて頭をすっきりさせていただきまして、ご飯を食べていない方はエネルギーを補給していただいて、2時間のバトルロイヤルを始めたいと思います。
 最初に今回の趣旨について、上野会長から10年目の反省のバックグラウンド、なぜこのような企画が大会中に行われているのかを含めて、説明していただきます。それでは上野会長、よろしくお願いします。

1.本学会の歴史を振り返る

(上野) 皆さん、遅くまでありがとうございます。今回の大会は第50回記念大会ということで、本学会は1968年に創立いたしました。当時は実験発生学、あるいは実験形態学というものから、分子や細胞に目を向けた新しい発生生物学というものを標榜してできたわけですが、このような当時の動きというのは学術研究のいわば大改革であり、革命と言うぐらいの大きなことでした。それ以来、この創設の目的が達成されているのか、あるいはちゃんと学会の活動を外に向けて発信できているのか、学会として正しく機能しているのかを10年ごとに見直すということが会則にも明記されており、10年ごとに見直し、学会の活動の反省を行うこととなっております。ですから、今回は5回目の見直しということになります。
 ちょうど10年前の2007年に4回目の10年目の反省を行ったわけですが、当時の相澤慎一会長の指名により佐藤矩行会員を検討委員長として、学会運営について、事務局運営について、この学会のオフィシャルジャーナルであるDGDについて、あるいは日本の発生学の現状と課題、世界の発生学の現状と課題、それからこれからの発生学ということで、バイオリソースや新しいテクノロジー、幹細胞研究、システムズバイオロジー、臨海実験所について、運営委員の間で数時間にわたって議論しました。そして、担当者を決めて、それぞれのテーマについて執筆いただき、それを冊子体・PDFとしてまとめたというのが第4回の反省でありました。
 今回、5回目に当たりどうするかということで、前会長の阿形さんと私で相談したのですが、今回はぜひ会員が出席する中で行おうと。また、もう一つは先ほどお話があったように、関連学会の方をお呼びして、学会外から見た発生生物学会について意見を頂くなり、それぞれの学会と比較するなり、われわれを外から第三者的に見てみるような企画をしようということで、今回の10年目の反省の企画に至りました。
 藤森幹事長が発生生物学会のサーキュラーを、本当に昔のものを全部読み通してくださって、その中から非常に多くの情報を得ることができました。恥ずかしながら、日本発生生物学会のホームページでは、第1回大会については開催地不明・大会長不明となっていたのですが、サーキュラーを見直すとともに、当時の関係者の方々に私の方から情報提供をお願いしたところ、第1回がこの東京の立教大学で林雄次郎先生を大会長として行われたことがはっきりして、それをホームページに掲載することができました。私としては、それが不明のまま残っていたのがこの10年間の反省の一番大きなところかなと思っています。
 2時間というのが長いのか短いのかは分かりませんが、会員の皆さんからも自由にご意見を頂いて、今後のこの学会の10年間の建設的な提言につなげられたらと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 この後、藤森幹事長から50年間の歩みについてお話しいただきます。

(阿形) ありがとうございました。それでは藤森さんの努力の結晶ということで、50年間を10分で振り返るという、とんでもない大役をお任せします。過去のサーキュラー100巻を全部読んで、それをまとめてくださって、展示場の横にポスターが貼ってあるのですが、その傑作をまだ見ていない方はぜひ明日にでもご覧ください。
 では、これから50年分の振り返りを10分でお願いします。

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2.活動の変遷(学会運営、英語化、国際化)

(藤森) 最初は第1回大会の記録を探していたはずなのですが、だんだん読んでいくうちにはまってきて、5月の連休を費やし、春の一研究をしてきました。ポスター会場でその研究成果を発表しておりますので、ぜひご覧ください。
 10年目の反省の資料として説明させていただきます。まず、第1回大会をいつどこで開催したかが分かっていなかったのですが、実はサーキュラーの55号に細かいことが記載されていました。また、実験形態学会が発行していた「実験形態学誌」から発生生物学会の和文誌として名前を変えて発行されていた「発生生物学誌」というものがあって、その中にも第1回大会の記録があります。原文が下にも貼ってありますので、見ていただければ分かると思うのですが、そこから情報が取れました。実は岩手大学に資料があって、荒木会員にコピーを頂きました。
 黎明期ということで、前段階として三つの団体が活躍しており、その中で雑誌体、学会経費でも発生学会に直接受け継がれた団体が二つあります。一つが1939年に設立された実験形態学会で、市川衛会長が代表でした。こちらの団体が発行していた雑誌が「実験形態学誌」です。もう一つは名古屋を中心に活動されていた団体ですが、日本発生学協会です。代表は佐藤忠雄さんで、こちらが発行していた英文誌が「Embryologia」です。これは現在に続いていますが、10号までを「Embryologia」で発行し、11号からDGDになっています。これらの二つの団体が直接、系譜として発生生物学会につながるものです。
 どうやら一回、連合体形成を試みたようですが、失敗に終わっています。それは1967年5月の集まりで提唱されたようですが、そこから約1年たった、1968年5月18日13時から立教大学5号館で設立総会が行われました。そのときの大会委員長が林雄次郎さん、議長が当時32歳ぐらいだった江口吾朗さんです。この日は総会だけをやって、学会則が定められ、その中に「10年ごとに根本的な再検討を行うべきだ」ということが盛り込まれました。聞いた話によると、当時26歳の前田(靖男)さんがそれを提言したようです。彼は後に運営委員になっています。
 そして、2日目の5月19日に第1回の大会が行われました。直接選挙で会長および運営委員を選ぶということが総会で決められており、8月に会長と運営委員の選挙が行われて、初代会長団勝磨さんと運営委員14名が選ばれました。計算してみると、平均年齢は42歳です。26歳から30代、40代が中心の非常に若い学会であることが分かります。会員は444名で、当時は二つの雑誌を発行していたので、どの雑誌を選ぶかによって会費の値段(和欧両雑誌希望者3000円、何れか一誌希望1600円)が違っていました。
 また、今回も経緯を知るのに非常に役立った資料なのですが、発生学会として「Information Circular」の発行が始まりました。ある程度の年齢の人たちは実体験として、赤い表紙の雑誌が送られてきた覚えがあるかもしれません。これは100号で終わっています。
 発生生物学会で重要視されていたことは二つあります。一つは学際性です。当時の運営委員の研究分野、それから大会で発表された内容を見てみると、植物や微生物の人たちも入っていて、動物に限っていたわけではありませんでした。当然、発生学が複数の学問分野にまたがるという形態もありますから、いろいろな分野から新しい技術等が入ってくるということもあって、開かれた学会でした。
 先ほど申しました和文誌(発生生物学会誌)は3年ほどでやめてしまって、その代わりに会員だけではなく、世の中の人がみんな読めるような本を作ろうということで、岩波書店より『発生における制御』をはじめとするシリーズで和文単行本が7冊発行されています。これは今、Amazonでも1冊2円ぐらいで買えます。送料は二百九十何円掛かりますけれども(笑)。その後、会員に限らない情報発信の媒体は「Embryologia」から受け継いだ、現存する重要な雑誌「Development, Growth & Differentiation(DGD)」に移行していきます。今日もお話がありましたが、雑誌のタイトルに「Development」と入ったのはわれわれの雑誌が初めてで、英国のDevelopmentは当時まだJEEMだったはずです。

(阿形) 「(Journal of)Embryology and Experimental Morphology」ですね。

(藤森) ということで、学際性が本学会の一つの特徴です。
 もう一つは、先ほど岡田節人基金のときの話にもありましたが、常に国際性を意識した学会であったということです。ISDB(International Society of Developmental Biologists)との関係がありますが、当初は個人会員としてそれぞれが個人で登録する必要があったのですけれども、1996年から日本発生生物学会はISDBの傘下に入り、発生生物学会員であれば自動的にISDBの会員になるということになりました。ですから、現在、皆さんはISDBの会員でもあるわけです。

(阿形) そうです。若い方々は履歴書に「発生生物学会員」と同時に「国際発生生物学会員」と書いても、何らインチキではありません。実際に上納金を納めていますから、正式に国際発生生物学会の会員です。

(藤森) そうです。年間30万円ほど納めて、われわれの権利を有しております。
 過去に2回、ISDBの大会を日本で開催しています。1回目は1977年に東京で、そのときは他の学会と合同でサポートしましたが、2回目は2001年に京都で日本発生生物学会の大会と併催でISDBの大会を開催しました。驚くべきことに、会長を歴代で2名、日本から輩出しています。岡田節人先生、竹市雅俊先生の2名が会長を務めています。
 もう一つ重要なのは、発生生物学会がアジア・パシフィック地区の発生生物学のコアになろうという動きがあり、これは竹市先生をはじめとした動きですが、Asia-Pacific Developmental Biology Network(APDBN)が2005年に創立されています。日本が中心になって始めた事業です。その後例えば2015年には、APDBN主催の国際会議が中国西安で開催されています。
 APDBNとのコラボレーションということもありますが、広く海外にも年会を開くということで、2007年の大会から英語化しており、今回の大会もそうですが、本日程は全て公用語を英語として進めています。それから、他の国の発生生物学の学会との合同年会が相澤会長のときから広く開催されるようになって、フランスと2回、また、今年はドイツとの2度目がありました。その他にもイギリス、アメリカ、スペインと、多いときで30名程度の日本人が参加して、各国の現地で合同大会を行いました。

(阿形) 多いときは80名ぐらい行っています。少ないときで30名です。

(藤森) 先ほども言いましたが、発生生物学会の中で大事な活動は、現在開催中の大会あるいは年会とDGDの発行です。これが2本柱になるかと思います。大会は、当初は1会場ないし2会場で開催されていて、600名程度の参加者があっても、2会場で何とか開催されていました。それがもうさすがに会場に入り切らないということになって、会場数が増えてきました。団まりなさんが会頭で行われた神戸大会は甲南大学で行われて、そのときは3会場あったのですが、他の会場の様子が見られるようにという配慮で、ロビーにテレビ配信システムが設備されるという工夫もあったようです。
 大会の会場数が増えたことの他に、発表形式が変わってきています。口頭発表やポスター発表が中心ではなく、シンポジウム形式が増えてきて、受け身、聞く大会のようになってきたところがあります。
 発生生物学会の一つの特徴だと思いますが、年会は大会長のやりたいようにやらせようということになっています。例えばつくば大会では和田洋さんが大会長をして、大いに議論しようということで、シンポジウムをできるだけ減らして口頭発表を多くするという試みがされました。
 初期の運営システムでは地域の会員が中心になって、現地で全て準備するという形式だったのですが、近年では会場を担当することが主催地の委員の仕事の中心になっていて、それ以外に他の地域の会員がプログラム委員などになって、大会を運営できる体制にしています。事務局の桃津さんも非常に活躍されていて、大会の運営が比較的容易にできるようになってきています。
 それから、合同年会として開催している大会もあります。近年では5年に1回、日本細胞生物学会と合同年会を開催しています。来年も細胞との合同年会です。驚いたことに、第3回大会が初めての合同年会で、それは日本植物生理学会との合同大会でした。
 もう一つの重要な流れはDGDの発行に関してです。先ほど言ったように「Embryologia」から受け継いで発行してきました。ただ、初期は経済的に学会運営を圧迫していて、科研費による支援を受けたりしましたが、それでも全然足りなくて、学会から切り離すかという議論もあったようです。ですが、結局は何とか学会として踏ん張って発行しつづけられていて、特に、現在はWiley社(旧Blackwell社)との契約により、ロイヤルティが入ってきています。むしろ学会に対してプラスになっているということです。編集の権利は発生生物学会が維持しているので、そこが大切なところかなと思います。発生生物学の雑誌としては国際的にも重要な位置付けにあり、今、インパクトファクターは2.4です。MODや「Developmental Dynamics」はDGDよりやや下ですから、DGDは発生生物学にとって非常に重要な雑誌になってきています。
 まとめますと、日本発生生物学会は国際化を標榜しており、大会を英語化し、他の国の学会との合同年会を開催したり、APDBNとの共催をしています。そして、岡田基金に始まったことではなく、実は幾つかいろいろな基金があったのですが、若手の会員を中心に旅費支援などをして、積極的に会員に外国の学会で発表させるという取り組みがなされてきました。国際化の一方で若手育成にも取り組んできています。相澤会長が中心になって始まったことだと思いますが、秋季シンポジウムや夏季シンポジウムを開催し、それぞれ若手PIやポスドク、大学院生を集めて、日本語でがっつり議論のできる場を提供しています。なお、特に大学院生などが年会で英語で発表するのはハードルが高いという場合に備え、Day0に日本語発表を残しています。これは年会の外枠に付いているミーティングです。その他、若手の研究会も支援していますし、もう一つ重要なアクティビティとしては、将来の発生生物学者を育てる、種をまくという意味で、学生に直接研修をするということもありましたが、現在は高校教員に向けた発生生物学の研修を行っています。
 以上、簡単に50年間をまとめました。

(阿形) ありがとうございました。続きまして、仲村編集主幹にDGDの歴史と状況を説明していただきます。

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3.DGDの過去、現在

(仲村) 私自身も編集長になってからちょうど10年を超えたので、自身も反省しなくてはならないところなのですが、それも込めて振り返ってみたいと思います。
 DGDの誕生は、今、藤森さんもお話しされたように、実験形態学会と日本発生学協会が1968年に合併して、「Embryologia」を継承しています。第1巻が1950年ですが、最初は1年に1巻ではなく、2~3年で1巻ということもあったので、今年で59巻になっています。
 第11巻からDGDになったのですが、初代の編集長が椙山先生、2代目が岡田節人先生ですが、岡田先生のときになって初めて1巻1年というのが定着しました。また、その頃に1年に4号だったのが6号になって、論文数も倍増しています。外国からの論文も、岡田先生が引き受けたころは10%未満でしたが、岡田先生が5年ぐらいやって引き継いだころには、2~3割が外国からの論文になっています。
 編集事務所に関しては、天野先生が広島大学の教授になったときに、天野先生が書いたものによると、「天野さん、わしと一緒に心中してくれ」と岡田先生に言われたそうなのですが、広島の大学出版というところに印刷所を移し、天野先生が出来上がった写真をチェックされたそうです。それで、岡田先生が編集し終わった1号分の原稿を恐らく風呂敷に包んで、新幹線で漆原さんなどの岡田研の大学院生が広島まで持って行ったようです。

 1988年からAcademic Pressを通して販売して、多分、外国にもかなり行き渡るようになったと思います。ただ、私は1979年にフランスにいましたが、当時、図書室にはありましたから、その頃にどのように販売していたのかは非常に興味のあるところです。
 当初は季刊で、それが隔月で1年に6号になって、それから八杉編集長のときに9号になっています。2005年ごろに「Embryologia」からはじまって全ての論文をPDF化し、DGDのサイトで見ることができるようになりました。そして、2015年からオンラインオンリーになっています。これについては今も時々、冊子がなくなって非常に寂しいというお叱りを受けております。
 初期は原稿を広島に持ち込み、天野先生が全てその後を見ていたそうです。また、論文の英文のチェックは今よりももっと手厚くされていたようで、団ジーン先生がチェックし、団ジーン先生が亡くなった後は徳島の市原先生の奥さん(市原エリザベス先生)がチェックしておられたそうです。
 藤森さんからもお話がありましたが、印刷費が高騰して、年会費がどんどん値上がりしていって、基金をつくったり、岩波書店から発行した単行本の印税を全額寄付したり、テレフォンカードを作ったりしたこともあったようです。販売をどのようにしたのかが私は非常に疑問で、よく分かりませんが、それはBlackwell社から出版するようになって、安定したということです。
 ところが、危機はもう一度ありました。これは私がちょうど編集長になったときのことですが、出版補助ということで科研費の補助を受け、それとBlackwell社から受け取るロイヤルティを合わせた収入とBlackwell社に支払う出版印刷費、DGD送料などの支出が釣り合っていましたが、科研費補助を受けるなら競争入札にしないといけないというように条件が変わったのです。それで、Blackwell社と交渉してロイヤルティを上げ、編集サポートももらうようになって、今のように収支はほぼ同じ、あるいは黒字になるぐらいの状況になっています。さらに5~6年前に科研費の方針転換があって、出版費用ではなく、オープンアクセスか国際情報発信のどちらかで応募できることになり、今は国際情報発信のアジアのハブになるということで科研費を頂いていて、岡田基金に加えて科研費も若手の交流に使うことができています。
 DGDがどれだけ読まれているかというと、ダウンロード数は年々上がってきており、18万回となっています。トータルの論文引用数も上がってきています。また、インパクトファクター(IF)は6月ごろに発表されるのですが、これはたとえばやがて発表される2016年のIFですと2014~2015年の2年間に発行された論文が論文一つ当たり何回引用されているかを示しているのですが(具体的には2014年、2015年に発表された論文の2016年に引用された数/2014年と2015年の論文数)、この移り変わりを見てみると、発生関係の雑誌のインパクトファクター(IF)は軒並み落ちています。例えば「Genes & Development」はIFが15ぐらいあったのが10前後まで落ちていますし、「Developmental Cell」は半分ぐらいになっています。「Development」にしても、2014年は10ぐらいあったのですが、2015年はもう少し下がっていて6前後です。「Developmental Biology」は3.5ぐらいで、この下にDGDがいて、「Developmental Dynamics」や「Mechanisms of Development(MOD)」などと団子状態になっています。ですから、皆さんぜひ多くの引用をしてくださるようお願いします。
 また、投稿論文と採択率ですが、2015年と2016年の投稿数を見ると減っているので、できるだけ投稿もお願いします。採択率については、オリジナル32%と聞いて驚かれるかもしれませんが、これはアジア諸国などからの投稿も非常に多く、さらに出版のレベルに達していない論文が多いことによっています。日本からの投稿論文に関しては採択率は80%を超えており、手厚く対応しているつもりです。ぜひご投稿をお願いします。
 私はどのような方針で編集してきたかといいますと、やはりインパクトファクターを上げるということです。そのインパクトというのは、時間のインパクトもあると思いますから、できるだけ早く出版することが大事だと思っています。そこで、査読を早くするのと、いちゃもんに近いコメントはスルーすることにしています。それでも私のチェックから漏れていっているものがあるようですが、これをできるだけ少なくするようにしたいと思っています。また、ライフサイエンスの論文に完璧さはないと思っているので、変なもの以外はできるだけ、時間的にインパクトのあるようなものは採択する方向で編集しています。
 査読に関しては、PIの人たちは忙しいので、頼んでも遅くなることが多いですので、ボランティアのレビュアーを活用することにしています。ボランティアのレビュアーはアメリカにいる中国人のポスドクの方が多いのですが、非常にきちんとレビューしてくれています。彼らのおかげでかなり早く、また、質の良いレビューができていると思っています。彼らに「グリーンカードをもらうのにサポートをください」と頼まれたら、私は推薦状を書いています。
 サブミッションからファーストディシジョンまでが2週間ぐらい、アクセプタンスまでが2カ月ぐらいということで、非常に早くしているつもりです。これは一つの特徴だと思います。
 それから、特集号や総説を充実させるということで、狭い意味での発生学にこだわらずに、分化など、関連のトピックに関しても特集にしています。ゲノムエディティングの特集やRNAの特集、avian model systemsを出版してきました。今年はMathematics, Physics, and Engineering in Biology、Size in Development、Vertebrate Brainの三つを計画しています。特集にはならないと思いますが、発生生物学会50周年を記念していろいろな総説を載せていこうと思っています。このゲノムエディティング特集が非常に好評です。また、私は「Development」や「Genes & Development」などを見て、良い論文を発表した日本人がいたら、総説を書いてもらったりしています。ただ、そういうことをサーベイしてみて、そういった一流誌に論文を載せている日本人の割合は減っているように思います。それは私の印象なのですが、非常に心配するところではあります。
 問題点があります。現在、オンラインだけになっているということで、お叱りを受けることがありますが、これは時代の流れとして仕方がないかと思います。大きな問題は、投稿論文数が減少しているということです。特集などを組まないと、年9号などとても発行していけない状況です。それは多分、大学院生、博士課程の学生の減少に一つ原因があるのではないかと思っています。また、オープン・アクセス・ジャーナルが非常に増えていることも影響していると思われます。
 また、これとは別に最近は倫理的な問題を防ぐように努めています。多重投稿の問題もありましたから、投稿時にはクロスチェックをかけて、他の投稿とどれぐらい似ているかをチェックしていますが、中には50%を超えるものもあります。それから、最近は動物実験、特にヒトの組織を使った実験もあり、こういったものにも注意しているところです。図の使い回しや異常操作についても、時々、査読者が図を90度回転させて使っているのに気が付いたり、私自身も別のジャーナルの査読を頼まれたときに、前の論文のグラフのx軸とy軸の割合を変えて載せているものを見つけたりしますが、これはチェックが難しいところですけれども、やはり時々は起こっていて、見つけたらすぐにリジェクトしているところです。
 私からは以上です。

(阿形) ありがとうございました。ジャーナルに関して、何か質問はありますか。よろしいですか。
 とにかく日本人の傾向として謙虚なのはいいのですが、自分の論文をなかなか引用しないというカルチャーがあるものですから、日本の雑誌はなかなかインパクトファクターが上がりません。ですから、ぜひとも自分の論文もきちんと引用する形で書くようにしてください。

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4.発生生物学会の現状の課題

 それでは藤森さんに今日の会の議論の対象とする課題を書いたスライドをお願いします。

(藤森) 今回議論していただくポイントを7つ挙げてみました。先ほども言いましたように、発生生物学会の特徴は学際性と国際性です。
 現状の一つの課題として、ピーク時は1500名いた会員が現在は減少傾向にあるということが挙げられます。
2つ目に年会の在り方です。会場数と言語が課題です。参加者が増えると、会場数が増えてしまいます。言語は既に英語化していますが、依然年会での言語が問題になるかも知れません。
3つめのポイントは、会員間のコミュニケーションです。年会での議論も一つの重要なコミュニケーションかと思うのですが、その在り方は十分でしょうか。サーキュラーが発行されていた時代ですと、会員からの意見がサーキュラーに毎回幾つか掲載されていたのですが、それがホームページ化されたときに少し置いていかれた感があります。BBSはありますが、少し書き込みにくいところがあります。
 4つめのポイントは国際化です。国際化がどんどん進んでいきますが、現状の方向で良いでしょうか。
 5つめとして、先ほど仲村先生からお話がありましたが、DGDの在り方はどうでしょうか。
 6つめに、学会の運営体制、法人化という課題です。学会の運営体制としては、現在は事務局に専任の事務員として桃津さんを配置しています。古い時代の事務局というのは研究者がラボ一丸となって学会をサポートしていましたが、それでは研究できないということで、運営体制が変わってきています。先ほど総会においても質問がありましたが、発生生物学会は法人化についていろいろ議論を進めてきましたけれども、今後どうするかは課題です。
 そして、最も重要なこととしては、発生生物学会は何のためにあるのかについても、ぜひ議論していただければと思います。

(阿形) ありがとうございます。10年目の反省というのは今回が5回目になりますが、星先生に聞いたら、1977年の1回目の反省会が、一番議論が盛り上がったそうです。それ以降は比較的モデレートになり、運営委員の文章だけで済ますこともあったようですが、今年は50年ということで、久しぶりに会員を集めて議論したいと思います。40年前に行われたことをさらに盛り上げるようにすることが、今日のポイントになっています。
 最初に議論しなければいけないことは、会則にも書いてあるのですが、10年目の反省のときには、まず学会の存続自体を考えなければいけません。ここが発生生物学会らしくて良いと思うのですが、昔のラジカルな発生生物学会を呼び戻すためにも、ここで一回、発生生物学会の存続に意味があるのかについてご意見を頂きたいと思います。「もうつぶした方がいいのではないか」「これだけ会員数が減っていくのであれば、他の学会と合体してはどうか」といった意見があってもいいのではないかと思うのですが、まずはその辺についてフロアから意見を頂きたいということです。
 残念ながら、今日は相澤さんがいらっしゃいません。相澤さんは前回の反省会で、「この状態ではつぶした方がいいのではないか」と明文化しているので、私が「相澤さんが来たら、まず存続すべきかどうかの議論について振りますよ」と言ったら、「今日はもう他の人と飲む約束をしてしまったから、参加できないよ」と言って行ってしまいました(笑)。今日の会の議論を盛り上げるのに、誰か他にそのような意見のある方がいらっしゃれば、お願いします。やはりそのような意見が出ると、いろいろと視点がはっきりすると思うので、、(会場を見渡していると、一人挙手される方が、、)
 それでは川島さん、お願いします。

(川島) 私は上野さんが今日で解散すると言ってくれるのだと思って、それで大急ぎで滞納金を払ったのですけれども(笑)。
 生物学分野では、研究会や学会が多過ぎて、年間で行き過ぎているような気になって、いろいろなところに所属しているのだけれども、あそこには3年間行っていないとか、2年間行っていないとか、今年は全部行ったから忙し過ぎたとか、そのようになっています。しょっちゅう新しい研究会ができるわけで、みんな存続に苦労しています。
 ところが、私は何年か前から共同研究の関係で日本地球惑星科学連合に行っているのですが、地学系の人たちのコミュニティではその問題は既に解決していることが分かり、なぜ生物学はそれをうまく解決できないのだろうということに気づきました。地学ではどうやっているかというと、ざっくり言えば、全部の地学系の学会が連合と名乗って、幕張メッセなど、同じ場所で1週間ぐらいの間に大会を全部やってしまうのです。そのようなことを春にやって、秋はもっと小さい研究会が勝手に日本全国あちこちで行われるということで、要するに大きく分けて年に2回あるわけです。とにかく春のものにさえ行けば、自分の所属する全部の学会に対して、総会などいろいろなことを通じて顔が利いたことになります。それで、もっと小さいコアな研究会については、3年間でつぶれるようなものもあったりするのですが、それは秋に行けばよくて、残りの期間は一生懸命研究をするという形に落ち着いてきているらしく、その辺がすごく賢いなと思いました。
 多分、生物学が連合化できない理由の一つは、地学系のように巨大な学会がないために吸収できないからです。日本地球惑星科学連合に行ったことがある人は分かると思いますが、コアとなっているのは例えばNASAと研究をしている人たちとか、電波望遠鏡を作っている人たちとか、国際宇宙ステーションとか、そういった巨大な人たちがお金を持っていて、連合化するためのコアになれるので連合化ができるのですが、生物学はみんな何となく独立独歩で、みんな自分の首を絞めているという状況になっているのです。
 多分、阿形さんたちの世代はうまく逃げ切ったのですが、10年後、20年後にはさらに日本の人口は減るわけですから、どんどん首を絞めるのは当たり前です。やはり連合化をどこかで真剣に考えなければいけない日が来ているのだろうなと思っています。

(阿形) それはかなりジェネラルな話で、発生生物学会に限った話ではないですね。

(川島) 発生生物学会もそれに入るのではないかということです。

(阿形) もう少し発生生物学会そのものに特化したような意見があればお聞きしたいのですが、ありませんか。
 意見がなければ、存続はするという前提で、これから議論をしていきたいと思います。先ほど川島会員からあった問題については、今日は諸学会の会長さんもお呼びしていますので、その点も含めて、もう少しエクステンシブに議論したいと思います。

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5.各学会からのコメント(学会運営、法人化、年会運営(共催))

(阿形) それでは、これから議論するに当たり、今日のゲストをご紹介します。先ほど上野会長からお話があったように、内輪の会としてやるだけではなく、やはり外から見た学会に対するコメントや意見を頂きたいということで、今回は日本細胞生物学会の会長である吉森さんにお越しいただいています。お忙しいところ、わざわざありがとうございます(拍手)。
 日本動物学会会長の岡さん、どうもよろしくお願いします(拍手)。
 日本分子生物学会会長の杉本さん、よろしくお願いします(拍手)。
 日本再生医療学会からは岡野さん、お忙しい中をありがとうございます(拍手)。
 日本進化学会からは田村さんに来ていただきました(拍手)。
 以上5名、発生生物学会と比較的縁の深い学会から会長さんをお呼びして、これから10年目の反省を、外から見た第三者の目も加えて議論したいと思います。各会長、今日はお忙しい中をありがとうございます。まずは一言、自己紹介も兼ねて簡単にコメントを頂けると嬉しいのですが、よろしいですか。

(杉本) 日本分子生物学会第20期の理事長を務めております、杉本と申します。よろしくお願いします。
 日本分子生物学会はConBio2017で発生生物学会にも協賛いただいていますが、それが第40回の年会で、来年に40周年を迎えます。発生生物学会よりは約10年若いということで、今日はまたいろいろ議論させていただければと思います。

(阿形) 続きまして吉森会長、お願いします。

(吉森) 日本細胞生物学会の会長をしております、吉森です。
 日本細胞生物学会は先ほども歴史の中でも出てきましたように、発生生物学会とは合同大会をやらせていただいており、確か最初は2002年に横浜で行われて、それから既に3回の合同大会を実施しています。来年も合同大会をやらせていただくということで、非常に近く、規模も同じぐらいだと思っておりますので、今日はわれわれ細胞生物学会の存続のことも考えて、来させていただきました。よろしくお願いします。

(阿形) 岡野会長、お願いします。

(岡野) 日本再生医療学会理事の岡野です。外部からとは言いながら、日本発生生物学会の会員もちゃんとやっていますし、DGDのエディトリアルボードもやっています。
 再生医療はいろいろなビジネスにも結び付くということで、日本再生医療学会では会員がどんどん増えていますが、学問にとって大事なのはやはり基本的なコンセプトであり、それは発生生物学に学ぶところが非常に大きいと思います。よく発生生物学会と合同セッションをやっており、阿形先生をはじめとする皆さまにお話しいただき、やはり基礎研究は非常に重要だとあらためて思っているところです。
 アメリカの幹細胞学会などに行くと、Juan CarlosやMarianne Bronnerみたいな「おまえは発生生物学者だろう!」というような連中が、昔からiPS細胞をやっているような顔して、何と最近はNicole Marthe Le Douarin先生やJohn Gurdonといった連中が、幹細胞や再生医療の学会ですごい存在感を示して、良い研究をしているのです。京都でこの間、少し実験的にやったのですが、当時はまだiPS細胞ができましたぐらいのときで、なかなか発生生物学会にフィットする話題ではなかったのですけれども、本当に最近はin vitro organogenesisなど、発生生物学で非常に重要な議題が幹細胞の学会で発表されています。
 ですから、ぜひそういったところで協調できればと思っていますし、発生生物学者には非常に優秀な方が多いので、どんどん参加していただきたいと思っています。個人的には突然、レビュアーに入れられたときに、近場にいる福田公子さんに「ちょっと帰りがけに寄ってよ」などと言ってヒトiPS細胞由来の神経堤細胞のニワトリ胚へのインジェクションをやってもらったりして、最近ではおかげさまでうちの小児科医もニワトリ胚にインジェクションできるようになって、今、発生生物学はマイブームでいろいろやっているので、今後ともよろしくお願いします。

(阿形) ありがとうございます。続きまして田村会長、よろしくお願いします。

(田村) 日本進化学会の田村と申します。日本進化学会は1999年の設立で、今年、第19回大会をやるので、比較的新しい学会です。会員数は1000人を超えて、今、微増しています。ただ、設立してまだ20年もたっていないので、初期に入った若い人たちがまだ残っているわけです。だんだん高齢化していて、その人たちが引退したら、逆にどっと減るかもしれません。今のところは良い調子なのですが、将来はどうなるか分からない、高齢化しているというのが問題です。
 先ほど合同年会の話が出ましたが、もともと進化学会を主学会としているとか、進化学会のみに所属しているという人はほとんどいません。ですから、進化学会自身が合同大会で、遺伝学会、生態学会、系統分類学会、それから発生生物学会も川島さんや、昔は阿形さんも入っておられましたし、その点では他の学会と比べて少し変わった学会かもしれません。

(阿形) ありがとうございます。今度は一番古い、伝統のある日本動物学会から岡さん、お願いします。

(岡) 日本動物学会の会長をしております、岡と申します。よろしくお願いします。
 日本動物学会は何と1878年に設立ということなので、もうすぐ140年近くという非常に長い歴史の学会です。社団法人になったのが1993年ということで、かなり昔にもう仲良しクラブではなくて、社団法人化を経験しております。20年間ぐらいそれをやって、2012年に公益社団法人となり、その張本人の阿形さんがいらっしゃるので、私が出てくることもないかなと思ったのですが、今日このような集まりに呼んでいただいたのは、多分、「外から見た」発生生物学会ということで、この発生生物学会には動物学会の会員の方が私の知っている方もたくさんいらっしゃいますけれども、逆に私は動物学会に学生のときからずっといて、神経科学学会やニューロサイエンスの学会、内分泌の学会に出るなど、完全に発生生物学会とは違う学会にいましたから、そういう点で何か適当な意見が言えればと思って参りました。よろしくお願いします。

(阿形) ありがとうございます。
 今日、まずは会員数というのが1番目のトピックです。先ほど藤森幹事長からあったように、発生生物学会の会員数は、ピーク時は1500人でしたが、今はいよいよ1000人を割ろうかというところまで、じわじわと減ってきています。それは全般的に、どこの大学も同じだと思うのですが、最近の傾向として博士課程に行く学生が激減しているということがあると思います。
 そういう中にありながら、他の学会はどうなっているかというと、再生医療学会はすごい勢いで、ブームに乗って、会員数はかなり増えています。再生医療学会だけが突出しています。あと、分子生物学会は今、人数的にはどういう感じなのでしょうか。やはり大学院生の減少とともに、会員数は減っているのでしょうか。

(杉本) 分子生物学会は現在の会員数が約1万3000人なのですが、ピーク時は1万6000人でしたから、微減傾向にあります。

(阿形) なるほど。うちの大体10倍のスケールで、同じような傾向にあるということですね。細胞生物学会はどうですか。

(吉森) うちは発生生物学会より先に1000人を切りましたが、今は少し持ち直して学生が少し増えたので、1200人ぐらいというところです。

(阿形) うちと似たような規模ということですね。進化学会は比較的じわじわと新しい分だけ増えてきて、まだ下がる方には行っていないということですね。規模的には・・・。

(田村) 1000人強です。

(阿形) うちと似たような規模ですね。動物学会は?

(岡) 動物学会は確か今、2300人ぐらいだったと思います。ピークから見ると少しずつ減りつつあるというのは、多分、これはやはり大学院生が徐々に減ってきているのに合わせて減ってきているのだと思います。先ほども言ったように140年近く続いている学会で、最初はもちろん十何人から始まっているわけですが、いったん増えてプラトーに達してからは、そんなに大きく変わっていないと思います。動物学会はマルチディシプリナリーなので、いろいろな分野がありますから、それでトータルのバランスから見るとコンスタントに、比較的安定しているような気はします。ただ、もちろん右肩下がりで、じりじりと減ってきている傾向はあります。

(阿形) これについては藤森幹事長と既に話をしているのですが、深く議論しないと。発生生物学会は大きさにはこだわらないということが昔から原則となっていて、小さければ小さいほど良いのではないかというポリシーもあるので、小さくなったことを寂しがることは一切ありません。若者、博士課程の学生が減っているという全国的傾向については後で議論したいと思いますが、基本的には会員数が減っていることはあまり気にしないということで、次のお題に移りたいと思います。
 2番目のお題は、年会の在り方です。多分、一番ラジカルに英語化したのが発生生物学会ではないかと思うのですが、他の学会は今、英語化についてはどの程度進んでいるのか、現状について教えていただければと思います。それでは、分子生物学会からお願いできますか。

(杉本) 国際化、あるいは英語化については常に議論しているのですが、発生生物学会ほどはフルに英語化されていません。基本的にはシンポジウムのオーガナイザーに任されているという状況です。招待講演者に外国人の方、日本語を話せない方が含まれている場合には、基本的に英語でセッションをやるという程度です。あとは年会長ごとに、できるだけポスターは英語で書くとか、そのあたりの温度差が若干あるということで、まだ議論を毎回続けているところです。

(阿形) キメラですよね。英語でやるシンポジウムと日本語でやるシンポジウムがバラバラにあってという感じですね。

(杉本) はい、バラバラです。

(阿形) ですが、ある意味では学生さんは選べるというか、「自分は英語が無理だから、日本語のセッションに行こう」「今年は英語のセッションを聞こう」といった楽しみ方ができる状態ではあるということですよね。
 細胞生物学会の方はいかがでしょうか。

(吉森) 分子生物学会と同じで、議論はずっとあります。完全英語化も考えた時期があったのですが、ここしばらくはずっとキメラでやっています。それは各オーガナイザーに任せられるのですが、全体を見て、英語のシンポジウムがなくならないようにもしています。基本的には外国人スピーカーを呼んだ場合は、そこは英語となります。ある時間帯に必ず一つ英語のセッションが一つあるように組んで、外国から来た人がどこも聞けないという時間ができないようにしている大会もあります。

(阿形) なるほど。それでは岡野さん、再生医療学会の方はどうですか。

(岡野) 再生医療学会は非常にまずいのです。私は国際委員会の委員長もやっているのですが、国際化は非常にまずいですね。非常にドメスティックな学会です。そこは何とかしないといけないと思っています。
 ただ、再生医療学会には規制当局、PMDAや厚生労働省の方が大勢来ますし、患者団体の方も来ますし、あとは企業の人などもいますから、彼らにアカデミックなセッションを全部英語でやるといっても、なかなか学会の趣旨として成り立たないところがあります。一応、対策としてはバイラテラルに韓国と日本とか、イギリスと日本でstem cell symposiumというような、セッションごとに外国人を呼んだセッションをやっているところです。従って、学会の特性から言って、全部英語化というのはまずやらないというポリシーでやっています。
 ただ、発生生物学会との合同については、やはり英語でやってもいいかなと。そこに外国人の方を呼んで、非常にアカデミズム、クオリティの高いセッションもやらないと、なかなか基礎医学者として再生医療学会に行くというのは非常に不完全燃焼感があるので、そこはやっていきたいと思います。皆さんいろいろとお呼びしたいと思いますので、ぜひいらしてください。

(阿形) ありがとうございます。続きまして、進化学会はどうですか。

(田村) 進化学会も基本的にオーガナイザーがいて、オーガナイザーが各シンポジウムやワークショップを主催するというやり方が基本なのですが、並行して7~8やっているうちの一つくらいは英語にしようよという話が評議会などで出てきて、それを聞いていたオーガナイザーがなるべく自主的に英語のセッションを主催するという程度です。ですから、外国人の方が来たら、話題を選ばずに英語のところだけを渡り歩いていれば、何とか多少は参加できるという程度です。

(阿形) はい。では、動物学会からお願いします。

(岡) 動物学会は、一般講演・ポスターは日本語が原則です。ただし、シンポジウムについては、公募のシンポジウムもあれば、本部企画のシンポジウムもありますが、何年かに一回は本部企画で外国人スピーカーを呼んで、全て英語でやる場合もあります。それから、シンポジウムでオーガナイザーが外国人の方を呼んだ場合には、もちろん英語でやるということはあります。
 やはり動物学会は発生生物学会と違って専門がスペシャライズしておらず、動物学会の一番の特徴というか、良いところというのは、いろいろな動物学の分野の人たちが来ることです。ですから、動物学会に3日間いると、何か新しいものを得ることが非常にたくさんあるわけです。ふらっと入った会場で全く自分の専門外のことを聞いて、そこでアイデアを得たり、新しい動物実験系を発見したりすることが多々ある学会なのです。そのような新しい発見をするときは、せっかく日本でずっと百何十年も培われてきた動物学の土壌の中で、やはりわれわれ日本の動物学のレベルは非常に高いと思いますから、日本語で議論するというのは重要ではないかと思います。学会の国際化について議論はしていますけれども、やはり全面的に英語化しようかという話にはなりません。
 ただ、昨年は初めて国際動物学会というのを動物学会が開催しました。阿形さんが会長の時に引き受けて、武田さんが全体のオーガナイザーをされて、歴代の学会の会長がみんなそろって、日本で初めて開催しました。あれはわれわれが期待した以上に若い人たちが英語で議論に参加しており、大変活気がありました。もちろんインターナショナルの学会でしたから、全て英語でやって、外国人の方もかなり来ました。そこで若い人たちを中心としたシンポジウムのオーガナイザー、スピーカー、オーディエンスの質疑応答を見ると、かなりちゃんとなじんだ形で、インターナショナルなシンポジウムを聞いて、ちゃんと質疑応答ができていました。
 ですから、何年かに一回はそのような国際会議のような形、もしくは少なくともプレナリーのスピーカーを何人か呼んで、日本人、特に若手にオーガナイズしてもらうとか、動物学のある分野の中で組んだオーガナイザーにインターナショナルなシンポジウムをやってもらうとか、そういったものを一部行っていくのは非常に有効ではないかと思っており、当面はまたそのような形でやっていくことになると思います。

(阿形) ありがとうございます。学会ごとにいろいろな特性があり、会員数、メンバー構成の違いなどもあって、いろいろな形で英語化を試みているということです。発生生物学会は2007年から完全に公用語を英語にするという大胆なことを始めて、多分、これは日本で最初だったのではないかと思います。今日もいろいろ議論していたのですが、やはりやってよかった、もうだいぶ自然(natural)な状態になってきているので、よいのではないかと。もちろんマイナスの部分はあることはあると思いますし、特に若い方々には少し付き合いにくいかなというところがあるのですけれども。
 その点は、今日、高橋淑子会員から指摘があったように、やはり座長の力量が一番問われると思うのです。座長に力量があって、それでもう少し英語化のところをスムーズにつないでくれれば、もっとレベルアップできるのではないかと思います。英語化に関してどこまで議論するかですが、今さら戻る気はないというのがこの司会者の勝手な考え方なのですけれども、何かご意見があれば、特に若い方々も遠慮なく言っていただきたいと思います。

(田中(幹子)) 国際化されてレベルもすごく上がって、とてもこの学会に学生を連れてきたいのですが、そろそろ時期を考えてほしいなというのが、ものすごく正直なところです。
 学会の言語は、私は最初の新潟のDay0のオーガナイザーだったのですが、あれがあると階段になってとても良くて、その後、「次は英語で頑張ろう」というふうになりますし、英語が話せなくても、最初は日本語で来てそのまま続けられるということで、あれは死守してほしいと思っています。今さら戻らなくていいのですけれども。
 もう一つは年会の在り方です。どこのラボもそうだと思いますけれども、もうドクターの学生はすごく少なくて、ラボの主要メンバーは全部マスターだと思うのです。しかし、マスターを連れてこようと思っても、この時期は無理なのです。今、この会場の手伝いに来ている子も、4年生ですし、マスターはクォーター制になって、この時期、1年生は絶対に講義で来られませんし、2年生は就活でいません。今、うちの研究室は進化学会と動物学会にほとんど移行して、私だけがここに来ている状況なので、学会員数の減少とも併せてと思うのですが、ここ数年、私は学生を連れてくることができていないので、皆さんがどうかは知らないのですけれども、真面目に考えてほしいと思いました。

(阿形) 分かりました。年会の在り方の問題ということで、英語化に関しては別にクレームがあるわけではなく、オーケーという意見だったかと思います。ただ、時期に関しては考えてほしいと言われましたけれども。
 英語化について他にご意見のある方はいらっしゃいますか。では、笹井さん。

(笹井) 英語化には賛成なのですが、若い人がこれから英語でプレゼンしたいとか、英語で何か書きたいというときに、なかなかそれまでに経験がありません。学会として、例えば抄録を英語で書いて出したらネイティブのチェックが入るとか、あるいはプレゼンをした後に「あなたのプレゼンはここの部分の英語が間違っているよ」「英語をこのように直したらどうですか」といったアドバイスがあるとか、そういった支援があるといいと思います。
 あと、今日も例えば学生か若手の人が話して、大御所が質問されたときに「That's a good question.」などと言うと、すごくインポライトな感じがして気になったので、そういう受け答えは駄目なのだということをちゃんと周りの人が教えてあげるのも重要です。英語化するだけではなく、英語を話そうとしている人を学会としてサポートするようなシステムがあるといいと思うのですが、どうでしょうか。

(阿形) はい。他にいかがですか。高橋会員。

(高橋) 英語化と先ほどの座長の役目についての話だったので、それから後ろに林さんが次の大会会長でおられるので、次期大会に向けて座長の位置付けをまたあらためてお願いしたいということの延長線上で言うと、先ほどはあえて言わなかったのですが、英語化になって、学生は本当に心臓バクバクでやっているはずなのです。それで、本当にごく一部の恵まれた学生以外はなかなかうまくいきません。しかし、それでも頑張ろうということで始めたわけですよね。
 それなのにセッションでは英語が下手だから質問できないとか、あるいは頑張って質問したけれども途中で止まってしまったとか。私はそれでも頑張ろうよというのがこの学会だと思うわけですが、そのときに座長が何もしないというのは、何をやっているのかと。ですから、「座長さん、頑張りましょうよ」と先ほどは言いたかったのです。「それくらいのことはやってね」と言ったら、それこそ個性をさく裂させてやってくれたらいいと思います。
 先ほど笹井さんが言ってくれたことには私は反対で、何でもかんでも学会が援助してくださいというのではなくて、アブストラクトをきちんと書くのは指導教員の責任だと思います。それから、「Oh, that's a good question.」でいいではないですか。シニアと若手を区別しないのがこの学会で、シニアなのにbad questionだったら、それはbadと言えばいいのです。少なくとも私たちはそうやって育ててもらいました。ですから、あまり上と下の差がないのではないかと思うわけです。これは生命科学の学会の中で本当にめずらしい学会だと、私は自負しています。
 笹井さんの言いたいことはすごくよく分かるのですが、学会の支援というふうに学会に押し付けずに、笹井さんが言ったらいいのです。これは表現が難しいのですが、何かあれば、私は自分の学生にはもちろん厳しく指導をするつもりです。ですが、何かあったときには、他のラボの学生でも「ちょっと、ちょっと」と言えるのがこの学会ではないでしょうか。それをしないというのは、それこそシニアの世代の大きな間違いだと私は思います。

(阿形) 分かりました。時間がないので、あまり詳しくは議論しませんが、笹井さんからそのようなご意見があったということに関しては、運営委員会で私から議論の題材として挙げさせていただきたいと思います。
 では、西田さん。

(西田) 先ほど田中さんからお話がありましたが、今年、Day0は6~7人しかいなかったのです。

(阿形) 7人でしたね。

(西田) 1日目に聞きに行きましたが、前日にやるはずだったのが、人数が少な過ぎて当日に、1日目に食い込んだという話で、2年後に大阪でやることになりますが、このままだとDay0がなくなる可能性があると思いました。その理由ははっきり分からないのですが、それは考えた方がいいかもしれないなと思います。

(阿形) はい。では、近藤さん。

(近藤) 笹井さんは美しい英語を話す社会から日本に戻ってきたので、そのようなご意見をお持ちかもしれませんが、国際化というか、英語を使うというのは、きれいな英語を使う必要はないと私は学生に言っています。単数、複数、冠詞などはどうでもいいと。ボディランゲージを使ってでも、とにかく伝えることが大事で、美しい英語を使おうと思ったら、そこで萎縮するから駄目だという、むしろそういう逆の教育をしています。良い格好をしなくても、ひょっとしたらボロボロになるかもしれないけれども、とにかく若い人がインターナショナルな環境で自分を表現するという体験をする場として、美しい英語はむしろ要らないと。とにかく通じるよう努力しようと言っているので、何のための発生生物学会かということに関わりますが、やはり学生が発生生物学の分野で伸びるための学会だと思うので、そういう意味で国際化を捉えていただきたいと思います。

(阿形) では、英語の議論の最後に森下さん。さらに分散させるのではなく、できるだけ締めてください。

(森下) 国際性、学際性、英語、Day0の全部に関連する意見なのですが、私は数理の人間で、今年で10年目ぐらい、この学会に参加するようになったのですが、マイノリティの意見としてお話しします。
 異分野から入ってくると、自分の近くの分野の人もみんな、発生現象を数理モデルにしたいとか、解析したいというのがあるのですが、いきなり英語で聞くと、ただでさえ生物の言葉も分からないのに、本当に宇宙人のようだという人が結構いるのです。ですが、Day0や日本語のセッションがあると、「ああ、こういうことが問題意識で、こういうことかな」ということで、私も最初にこの学会に来たときは日本語のセッションがすごくよく勉強になって、そういう意味では、学際性と国際性というのは必ずしも全部英語がいいというわけではないのかもしれないという感想です。

(阿形) ありがとうございました。では、岡野さん。激論が尽きませんね。

(岡野) 私はこの発生生物学会がいろいろなスピーシーズの発生をやっているというのがすごく面白くて、自分がやっていないようなスピーシーズの発生の勉強にすごくなると思っています。それを英語でやると、結構きついところがあって、これは他の学会での知恵なのですが、そういったいろいろなスピーシーズならスピーシーズで、教育講演のようなものをやるのです。それは日本語でやって、それ以外の思いっきりオリジナルデータを使ったところは全部英語でいいと。
 やはりそういうものがあると、非常に分かりやすいですし、勉強になりますし、学会に来ようかなという気になります。あるいは英語でもいいのですが、ちゃんと日本語訳を付けておくとか、やはり他のスピーシーズのある特定の細胞や発生ロジックなどをいきなり英語でというのは、なかなか結構つらいものがあります。分からないと、結局、理解したことにならないので、理解が不完全なまま聞いているというのもなかなかつらいところがあります。ですから、そういった啓蒙的なところがあると、私はうれしいかなと思います。

(阿形) 分かりました。だんだん発生生物学会らしくなってきて、盛り上がってきましたが、年会の在り方の中でもう一つ、先ほど田中幹子さんからも提案があったのですが、時期についてです。他の学会との重複もあって時期の選定はなかなか難しく、今日もなぜ発生生物学会は5月という、いろいろな生き物が卵を産む唯一の季節にやっているのかという疑問があって、そうしたら、これは仲村DGD編集長から聞いたのですが、昔はバフンウニをやっている方が強くて、最初は3月に発生生物学会をやっていたのですけれども、バフンウニをやっている方から文句が出て5月に戻ったという話でした(笑)。
 時期としては、今、フィールドの材料をやっている人はそんなに多いわけではないのですが、時期に関して議論はあります。確かに2年生は発表しにくいのですよね。分子生物学会は12月で、M2の学生が修士論文を書く前に分子生物学会のポスターを英語で書いて練習するという、そこで原稿が大体出来上がるということで、分子生物学会は今の学生のスタイルからすると、非常に良い時期に開催されています。
 一方、5月は最悪に近いです。就活もあって、ほとんど来られなくなってしまうので、その辺は一回議論をしなければいけないかなと思います。何か時期について意見やアイデアがあれば、お願いします。他の学会も含めて、この隙間が一番良いというところがあれば。結局、どこかの学会とは重なりますし、毎年、いろいろな国際学会の時期もあったりして、なかなか時期の選定は難しいですよね。だからといって、毎年、いろいろな時期に変えるのも冴えません。
 動物学会は大体9月ですが、これは多分、人数が多いので会場として夏休み中の大学を使わなければいけませんから、大学が夏休みの時期しかできないと。ただ、発生生物学会の場合は一般的に大学ではもうやらなくなっていますから、その意味では、時期は夏休みでなくてもできるような形になっています。ただ、授業のオブリゲーションがだんだんきつくなってきていて、14回必ずやらなくてはいけないので、休みの日にやってもらった方がいいという意見は大学の教員の会員から聞くことはあります。

(高橋) 何月がいいか、一度アンケートを採ってみるのもいいかもしれません。それぞれで事情がかなり違うと思います。

(阿形) 結局、一長一短ですからね。8月にしたら誰かが泣くし、9月にしたら誰かが泣くという、必ずみんなが満足する月というのはありませんから。その辺は逆に言えば、いろいろな時期にすると、「この年は、私は参加できるようになる」という、そのような多様性の案もあるかもしれません。この場では決まらないので、それは後でまた議論させていただきます。
 以上で年会の在り方の議論を終えて、3番目の会員間のコミュニケーションについて話題を移りたいと思います。現在、発生生物学会はニュースレターを出していません。掲示板が実は学会のホームページにあって、最初に掲示板を作ったころは若手の会員から学会運営の在り方についていろいろ苦情があったりして、桃津さんの方であまりにも駄目なものは削除したりしていたのですが、今はもう掲示板の方はなかなかうまくシステムが動いていません。
 最近、SNSのシステムが世の中をドミネートしてきており、学会の会員間のコミュニケーションの仕方も少しずつ形が変わってきていいのではないかと思いますが、今、各学会で冊子体としてニュースレターを出しているところはありますか。神経科学学会は出していますね。それから分子生物学会も出しているということで、手間などがかなりきついと思うのですが、どうですか。

(杉本) 分子生物学会は会報を年3回、冊子体で出しています。それ以外の折々の連絡はメーリングリストで送るという形にしています。

(阿形) その他は大体、メールとホームページがやはり主流ですよね。細胞生物学会も冊子はなくしていますよね。
 その辺、どうですか。会員のコミュニケーションの場としての、特にこれからの若い世代の方々にはSNSと言ったシステムがだんだんドミネートしてくるのではないかと思うのですが、年寄りにはなかなかなじみにくい部分があるのですけれども、何か良いアイデアはありますか。藤森さん、先ほど100巻を読んでなかなかよかったというご意見がありましたが、冊子体の良さを再認識されたようですけれども、どうですか。

(藤森) 別に冊子体である必要はないと思うのですが、年会の感想などを、こちらから指名でもいいのですけれども、若い人に一文書いてもらったりすると、各大会での不満ややり方についての感想などが得られて、次の議論にもまた発展できるのではないかと思います。

(阿形) そういえば、基金でサポートをもらった方には最低限レポートを必ず書いてもらって、それをホームページに載せて記録に残そうという話をしたのですが、今回、それはあまり徹底しませんでしたね。池田君、それはちゃんと覚えていますか。

(池田) ちゃんと書いてもう提出し、すでにホームページに掲載されていますよ。

(阿形) 書いたということで、オーケーです。そういえば、私も読んだことを思い出しました。
 その他、会員間のコミュニケーションについて何か良いアイデアはありませんか。若い方々、「今どきはこれでいいのではないか」「こちらの方が早くて、コミュニケーションが取れるのではないか」といったシステムはありますか。

(田村) 進化学会では、ニュースレターがPDFで配信されています。冊子体はなくて、ニュースレターをPDFにしたものを配信していますが、それはコストダウンのためです。

(阿形) ですが、それは広報委員が要るということですね。

(田村) 要りますね。かなり負担がかかっているのは確かです。

(川島) 同じことを日本バイオインフォマティクス学会もやっていて、形式が似ています。進化学会も、日本バイオマス学会も、不思議なぐらいそのニュースレターがすごく面白いのです。なぜかすごく良い意見が載っています。BBSというと、大体みんな不満を書くのですが、ニュースレターだと、結局はPDFなのですけれども、すごく良いことを書くのです。それがなぜなのかは分かりませんが、人間工学的にそうなっていると思います。

(阿形) 参考にさせていただきましょう。次に合同年会の形について少し議論したいのですが、それでは、外国の発生生物学会との合同、それから国内の他の学会との合同の2点について議論したいと思います。
 今は細胞生物学会と合同で年会をしており、それ以外は創立3年目に植物生理学会とやった合同大会だけが歴史に残っています。他とはまだ、動物学会ともやったことはありませんし、進化学会ともやったことはありませんし、再生医療学会ともやったことはありません。分子生物学会とは今年初めてConBio2017に発生生物学会が参加することになりますが、まず、国内学会の方から何かありますか。「細胞生物学会とやるのであれば、進化学会とやった方がいいだろう」と言っている会員もいましたが(笑)、それについて何かありますか。
 では、各学会の方からラブコールはありますか。

(吉森) ここに細胞生物学会の会長がいるので、言いにくいのかもしれませんね。もし何だったら、私は出ていきますので、その間にでもぜひ議論を(笑)。
 私としても、ぜひこちらのご意見を聞きたいところです。これまで何回かやって、来年もやりますが、今後もどうだろうかということは、われわれの方もぜひ聞きたいです。細胞生物学会は発生生物学会とたまにしかお会いできないので、最近は間の年に、違う学会と合同大会をやっているという状況です。

(阿形) 若い方々に説明しておくと、細胞生物学会との合同は今度で5回目です。4~5年に1回なので、20年近く前に始めています。運営委員会でだいぶもめたのですが、まずトライアルしようということで始まって、最初は二つの学会が同じ会場でやっているのだけれども、口頭発表は違う部屋でやって、ポスター会場だけ一緒でした。そこだけ二つの学会が混ざり合って、聞きに行くのは勝手に聞きに行けるという形で、基本的にはインデペンデントに運営をして、ポスター会場だけ一緒にするという形の合同大会を第1回の横浜で八杉さんにやっていただきました、
 それから少しずつ融合していって、高橋淑子会員のときに「そのような中途半端なことをやっているよりは、全部を完璧に合同にする」と言って完璧に1個にして、それを見て合同年会の在り方をエバリュエーションしようということになりました。その後のアンケート結果では、もう完璧に一緒でいいのではないかという意見が主流になって、前回も、もうほとんど一緒になりました。そして、来年は林会員が会長を務められますが、基本的には全部融合した形になっています。
 融合したときに発生生物学会が一番変わったのは何かというと、細胞生物学会は大会の運営がオールジャパンでシンポジウムを組んでいましたが、発生生物学会は例えば九州なら九州地区の会員だけで運営をやるということで、その地域だけでやっていたのです。そのような違いがあったのですが、高橋淑子会員のときに発生生物学会もほとんどオールジャパンになって、細胞生物学会と同じような運営体制でやるようになりました。

(高橋) 前回、大会会長を1人にさせるという、全く違うものをつくったのです。寄せ集めではなくて。そのような新規性はあります。

(林) 来年の合同大会長を仰せつかっている、林です。来年はどうしようかということをお話ししておくと、発生と細胞というのは程よく共通点があり、また、違うところもあるということで、多分、一緒にやることで互いに新しい発見があって、さらに5年に一度ぐらいだと、忘れたころに「ああ、このようなものがあった」という新鮮感がある距離なのではないかと思います。
 例えば分子生物学会と日本生化学会が合同大会をやっていますが、近過ぎるので、実際にいつが合同で、いつが合同でないのかというのは全く分かりません。その意味では、資金面では合同でやるメリットはあると思いますが、学問面ではそれほど新鮮さはないと思います。一方、私がこのような合同大会で一番良かったなと思うのは、私が学生のときですが、日本遺伝学会と分子生物学会の合同大会です。分子生物では聞けない話があって、非常に勉強になり、発見がありました。ですから、そのような適度な距離と共通の認識がある学会同士が合同で時々やるというのは非常に良いことだと思いますし、それで良い交流ができるように工夫していきたいと思います。
 それから、今、どの学会でも大会をやるときは資金面の問題が非常に大きくて、特に発生と細胞ぐらいだと、このような会場を借りて運営しなくてはいけないので、大学の部屋を借りてやるよりも資金面の負担が大きいのです。その点では、合同でやることのメリットは互いにあると思います。

(阿形) では、荒木会員。

(荒木) 前から不思議に思っているのですが、知的な刺激という意味で言えば、割と分野的に近くて、役に立つ技術がお互いにあるのに交流がほとんどないのが、農学系の学会です。それは母体となっている学部が、こちらは理学部が中心なのに、向こうは農学部ということがあるのでしょう。
 合同年会をしろとは言わないのですが、例えばエレクトロポレーションにしても、あれは名古屋大学の農学部の村松さんがニワトリ胚に入れたりしはじめましたよね。また、ブタのエンブリオなどは非常に面白い格好をしているのです。あるいは最近もうちの教授に農学部出身の方が来られて、その先生は細胞を不死化する面白いテクニックを持っています。そのような農学系の学会との交流が異様に少ないと個人的には思っていますが、どうでしょうか。

(阿形) そういう観点で考えたことがないので、答えようがないのですが、誰か答えられますか。少ないのは事実というか、結果としてそうなっているとしか言いようがないのですが、昔は入谷さんなど、初期発生をやっているブタなどの畜産の関係の方々が結構いらっしゃったのですけれども、最近はあまり来られていないというのは事実です。昔は近畿大学や京都大学の農学系の方が結構いらっしゃっていましたけれども。
 他に何か、合同年会に関してご意見はありませんか。今日来られている学会の会長の方々から、ぜひとも発生生物学会というところがあれば、またご意見をお願いします。

(岡野) ぜひシンポジウムを、半日ぐらい・・・。再生医療学会は海千山千の、ものすごい拝金主義の人もいれば、開業医もいれば、国会議員まで来たりして、いろいろあるのですが、一方で非常に原理的に、生物学的な手法から再生研究をやろうとしている人もいます。拝金主義的な話というのは聞きたくないので、私は一切聞かないのですが、そこで発生生物学会と半日間の合同シンポジウムをやるとなると、日本の再生医療自身のグレードアップにかなりつながると思いますし、発生生物学会の方も「ああ、こういうネタがあるのだ」とか、結構役に立つと思います。発生生物学の知識がどのように医療に役に立っているかなど、恐らく皆さんが思っている以上にこの辺は役に立ちますから、ぜひやっていきたいと思っています。それは私と阿形さんで前にやったことがありますから、またそれを続けさせていただければと思っています。

(阿形) そういった意味では、今回のConBio2017の分子生物学会の中で発生生物学会のシンポジウムがあるというのは、一つの先兵的な会になると思うのですが、その辺について杉本さんから何かありますか。

(杉本) 少し宣伝させていただきますと、今年の12月にあるConBio2017というのは生化学会と分子生物学会の合同年会プラス、皆さまに協賛をお願いして、今、34学会に協賛いただいています。
 先ほどコンソーシアム的な合同年会の開催というご提案もあったのですが、今回はそこまでは行っていないのですけれども、数多くの学会から取りあえず一つずつシンポジウムを出していただき、さらにその学会に所属する方には参加していただきたいというものですので、普段は分子生物学会、あるいは生化学会に参加していない方々もぜひ今回は参加してみてください。
 分子生物学会は1万3000人ですから、基礎系の生命科学系の学会の中では突出して大きいのです。今、生化学会が8000人程度で、それ以外の学会と合同となると、規模が違うので、なかなか難しい面もあるのですが、今後も一つのセッションを特定の学会と合同でやるという試みは、何か面白いことが生まれる可能性もありますから、検討していきたいと思っております。まずはConBio2017に皆さんもぜひご参加ください。

(阿形) やはり本来、そういった生物系のコンソーシアムのことを議論してやる母体として生物科学学会連合があるというのが私の考え方なのですが、今回の分子生物学会のコンソーシアム形式の仕掛けによって、生物科学学会連合も地球惑星科学連合と同じようなコンソーシアム形式の年会を考えざるを得ない状況に追い込まれたのではないかと思います。これで生物科学学会連合の方で議論が始まって、何年かかけて、幾つかのステップを経ながら、コンソーシアム方式にトライするのかもしれません。その辺は各学会、発生生物学会で議論してもうまくいくとは思いませんから、生物科学学会連合の議論にまずは任せていいのではないかと。ただ、生物科学学会連合に参加している学会として意見を言うといったことは、あっていいのではないかと思います。それは多分、分子生物学会はここに参加されている学会ともコミュニケーションを取ってやっていくものではないかと思います。
 では、上野会長からお願いします。

(上野) 補足なのですが、まずConBio2017の方は、現在、分子生物学会員でない方が参加する場合は、分子生物学会員と同じ参加登録費でいいということでしたよね。ですから、会員と同じ特典が得られるということです。
 もう一つ、お話のあった生物科学学会連合は昨年から、地球惑星科学連合あるいはアメリカのFASEBのような、多数の学会が同時に同じ場所でやるという形式について検討を始めています。今年の4月の集まりでも、具体的に日本国内や海外の例を調査してより深い検討に入ると言っていたので、本学会としてもそのような場で意見表明していけば、そういった動きに参加することが可能な状況だと思います。

(阿形) 今回、分子生物学会がコンソーシアム形式をトライアルするのですが、では、来年もやるのかといったら、来年はやらないのですよね。来年は普通の分子生物学会に戻るので、1回目のこの仕掛けを基にいろいろな学会が経験してみて、生物科学学会連合のようなところで実際の経験を基に議論し、物事が進むのではないかと思います。その辺はやはり参加している学会が生物科学学会連合に対し、今回、分子生物学会の主導で開催するConBio2017についてフィードバックすればいいのではないかというのが、私の意見です。

(杉本) 分子生物学会は先ほどから申し上げているように会員数が非常に多く、もともと学際性を打ち出しています。先ほど発生生物学会もそうだというお話がありましたが、より広い範囲の分野をカバーしているので、発生生物学者の方も分子生物学会で学際的な研究をどんどん発表していただきたいと思っています。
 今回、コンソーシアム形式でやりますが、コンソーシアムでやることのメリットばかりではなく、デメリットも若干はあるということを申し上げておきたいと思います。これは分子生物学会に限った話ですけれども、分子生物学会はもともと大きいので、34学会と一緒にやるには、分子生物学会自身が企画するシンポジウムの数を減らさざるを得なくなってしまいました。そのように、こちらにとっては若干のデメリットが出てきてしまったということがあります。
 また、適正規模としても、分子生物学会で協賛企業を募集しますが、既に企業の数がサチュレートしているので、それ以上大きな規模で学会をすると、企業の数は増えないけれども、参加者が増えて会場をよりたくさん借りなくてはならないということで、結局、赤字になる可能性が出てきてしまうのです。ですから、適正規模が実は問題になっていて、中規模の学会が合同で一つの会場で学会をやるのは、恐らく経済的にもかなり大きなメリットがあると思うのですが、恐らく神戸や横浜で共同開催をする場合の適正規模は1万人ぐらいまでで、それを超えると、むしろ赤字が発生してしまう可能性があります。従って、サイズに関しても検討する必要があるかと考えております。

(阿形) ありがとうございます。こういった新しい流れがこれから積極的に議論されて、学会の在り方も少しずつ変わってくるのではないかと思います。発生生物学会は学会として、今、取りあえずは自分たちの学会をまずそのスタンスで考えて、合同のところは生物科学学会連合に預けるということで、当面はいいのではないかと思います。
 それでは、次に雑誌の問題について少し取り上げたいと思います。大体どこの学会も雑誌、ジャーナルを持っておられるのでしょうか。進化学会はまだ・・・。

(田村) まだないです。

(阿形) サーキュラーだけで、再生医療学会は日本語誌と英語誌を出していますよね。

(岡野) 一応、Nature Publishing Groupで「Regenerative Medicine」というのを作りました。

(阿形) それは大体、赤字にならずに?

(岡野) そうですね、何とか。

(阿形) 何とかなっていると。分子生物学会の「Genes to Cells」はWiley-Blackwell社と組んで、発生生物学会に近い形ですよね。多分、収入はうちより多いのだと思いますけれども。

(杉本) そうですね。Wiley-Blackwell社と組んで出していまして、今のところ黒字で、収入源となっています。

(阿形) なぜDGDより「Genes to Cells」の方が収入が多いのだろうと思うのですが、それは今回の話題としてはやめておきましょう(笑)。細胞生物学会は今、全部オンラインにされたのですよね。

(吉森) はい。うちは企業とは組んでいないので、前は冊子体だったのですが、それがもう学会の運営自体を圧迫したので、冊子体は完全にやめてオンラインで、かつ、科研費に頼っているような状況です。あまりよろしくない状況ですが、ただ、なくしてしまうと学会の存在意義にも関わってくるので、なくすという議論にはなっていないのですけれども、大変なのは大変です。

(阿形) 分かりました。動物学会は最近、冊子体とオンラインの両方ですね。

(岡) 阿形さんを前にして私が言うのも何ですが、動物学会は日本語の「動物学雑誌」から始まり、その後、「動物学彙報」という英語版もかなり昔から並行して走っていて、そのうち両方が合同になって「Zoological Science」というジャーナルになりました。
 それも最初はずっと冊子体だけだったのですが、阿形さんや私の時代にオンライン化しています。最初はJSTのJ-STAGEで開始しましたが、そのうちSPARC Japanというプロジェクトが国立情報学研究所を中心として始まり、それに最初に乗っかって、BioOneという幾つかのジャーナルをパッケージで、オンラインで売るというシステムで開始し、「Zoological Science」に関しては、現在、BioOneを始めてから10年以上がたつと思いますが、年間で数百万円の黒字を出しており、学会に収入として上がってくるような非常に良い感じで動きはじめています。
 その後、倉谷さんが中心となり、それから阿形さんが非常に尽力されて、今度はオープンアクセスで科研費を取って、科研費でジャーナルを出すのではなく、広報や国際情報発信をするために使うのですが、オープンアクセスのジャーナルである「Zoological Letters」を2年前に立ち上げました。今はまだこれからインパクトファクターが取れるかどうかという時期ですが、非常に特徴のある、息の長い論文がたくさん載っていることを売り物にして、日本のZoological Science、動物科学を国際的に売り出すということで、新機軸の「Zoological Letters」をオープンアクセスで立ち上げ、今、2年目を迎えているということです。私たちの感触では、非常に順調に進んできていると思います。
 ただ、オープンアクセスのジャーナル自体、評価がまだまだ定まらないところもあり、APC(article processing charge)の取り方もなかなか難しいところがあるので、今は国際情報発信の科研費を使って、投稿者がAPCを払わなくてもいいところで立ち上げています。ゆくゆくはそれを自律的に運営していけるようにしたいわけですが、今はまだ途上なので、これがうまくいくかどうかは皆さん見ていただければいいかと思います。

(阿形) 雑誌に関しては、各学会でそれなりに長い歴史で苦労しながら、それぞれが安定したところを求めて、まだオン・ザ・ウェイでやっているような感じですが、そろそろ皆さんの顔が疲れてきているので、最後に運営体制、法人化の問題に移って締めたいと思います。
 学会の体制として昔から議論されているのですが、一時期、公益法人化の波があって、結局、そのときに公益法人化したのは、この中では動物学会だけでしょうか。細胞生物学会も公益化されたのですか。

(吉森) 一般社団法人化しました。私が法人化後の最初の会長です。

(阿形) 取りあえずは一般社団法人になって、何年後かに公益法人化にすると。いきなり公益法人にはなれないので、一般社団法人化した後に実績を積んだら、公益法人になれるということですが、実際にやってみてどうですか。メリットとデメリットについて発生生物学会でも議論しているのですけれども。

(吉森) われわれの場合はかなり議論を重ね、調査して法人化を決断したのですが、多分、発生生物学会も同じぐらいの規模ですし、私の意見では法人化は必須ではないかと思うのです。

(阿形) 必須ですか。

(吉森) 法人化していないと、細かいことがいろいろあるのです。それですぐに何か大変なことになるわけでもないのですが、いろいろなことがあって、例えば会長が突然死亡した場合、学会の資産が会長の個人的なものと見なされて結構大変なことになったりするということが分かってきて、これは理念などという問題ではなく、やはり社会の中で存在する組織としては法人化しておかないと、いろいろまずいことが起こるというのがわれわれの結論です。それで、手続きは大変面倒くさかったのですが、法人化に踏み切りました。法人化してよかったかはすぐには分からないのですが、すべきだというのがわれわれの方針でした。

(阿形) なるほど。では、動物学会。

(岡) 日本動物学会は1993年に社団法人化して、法人を20年やって、それから2012年に公益社団法人になったのですが、やはり法人化についてはその間ずっと、もう二十数年前から議論が続いていました。
 それで今回、2012年にちゃんと公益社団法人になったわけですが、やはり社会での認知度は格段に違うと思います。やはり数千人の会員から1万円ぐらいの会費を預かると、相当な大金になるわけですよね。また、ジャーナルの発行や、学会を開催して一般市民に対して情報発信するといった行為全てが公益の活動になるわけですが、そのような公益の活動を団体として法的根拠を持って、法人格を持ってできるというのは、社会的な認知度がもう格段に違うと思います。やはりいくら何千人、何万人と集まっても、極論を言えば、あくまでも任意団体というのはオタクの集まりであって、お金を勝手に集めて勝手なことをやっているというふうに世間から見られるので、そのような違いがあるのではないかと思います。私自身、そこまで違わないのではないかと思っていたのですが、やはりこうやって法人化してみると、そのような違いがあるというのはじわじわ分かってきます。
 阿形さんは法人化委員会の委員長で非常に苦労されたと思いますが、法人化すると、大学でも大学法人の場合は本当にトップダウンで、総長以下トップの人、理事会が権限を持ってトップダウンでやるというイメージになります。ただ、動物学会は典型的な例なのですが、最初は支部会という非常に小さな草の根からボトムアップでできてきたような学会活動です。恐らくそれは生物系の学会はどこも似たようなものではないかと思います。ですから、法人化することによって、今までうまく動いていたシステムを完全にトップダウンにして崩すようなことになってはいけないということで、2年間かけて相当いろいろ議論をして、在り方も考えました。
 その結果、もともと存在している支部会の組織からボトムアップできるように、今、理事は全国に20人ぐらいいますが、支部会の会長が理事になって、それ以外の理事もいて、その理事たちが皆さんきちんと仕事をすると。先ほど会長が亡くなったら本当に大変だというお話がありましたが、任意団体だと、本当にその会長個人が亡くなったらおしまいなのです。ところが、公益社団法人は法人格で、理事会が全て法人の責任を持っているわけですから、理事会がしっかりしていれば、例えば会長の私が倒れても、動物学会は明日からきちんと理事会が責任を持って運営できるわけです。そういった点でも、やはり学会が法人化するのは非常に大事なのだなと、われわれはやってみて実感しています。

(阿形) はい。では、進化学会はどのような状況ですか。

(田村) 進化学会は今、まさに法人化の途上にあります。私が会長の2年間に法人化するというレールが敷かれて、今度の夏の総会で法人化が了承されれば、来年1月から法人化する予定になっています。
 あまりご存じない方向けにもう少し説明すると、例えば今、皆さん通帳は個人でないと作れませんよね。ですから、任意団体である限り、発生生物学会の通帳はないはずです。それでは会費などはどうするかというと、会長の口座に入れるというのが一つです。しかし、それだと会長が死亡した場合、学会の資産は法律にのっとって会長のご家族に相続されるというルールになっています。
 もう一つは、今、進化学会もそうなのですが、いわゆる事務委託です。従って、会費等は学会事務を委託している企業の口座に入っています。この場合、その企業が突然倒産すると、全部持っていかれることになります。法人化すると、法人格として発生生物学会の預金通帳を発行してもらえるので、そこに入れておけば、理事に持ち逃げする人がいなければ大丈夫ということになります。
 あと、われわれが法人化するときに気になったのは、今、進化学会は雑誌を出していませんから、何の収益も上げていないのですが、発生生物学会のように学会誌を発行して、そこでお金のやりとりがあると、今、その税務処理は重要ですよね。

(田村) 税務処理をした結果、税金が免除になるはずなのですが、そのときは法人格を持っている方が手続きはずっと楽です。

(阿形) 分子生物学会はまだNPO法人ですよね。一番規模が大きいと思うのですけれども。

(杉本) 分子生物学会はNPO法人になったのが2007年ですから、10年ほど前なのですが、なぜNPO法人で、公益社団法人にしなかったのかという議論を私が把握していないのですけれども。

(田村) それは私が知っています。2007年ですから、それがもう見えていたと思うのですが、2008年に法人法が大きく改定されて、公益法人には直接なれなくなったのです。必ず何か社団法人を経てからでなければ公益法人になれないということで、2008年より前はNPOになった学会が多いです。ただ、NPOの場合は、その法人のある行政のところに業務報告を出さなければいけません。東京都に事務を置くのであれば、東京都に対してNPOであることを証明するような業務報告をしなければならず、面倒くさいのです。
 2008年に一般社団法人にはなりやすくなったので、逆にもう法人にならないという言い訳ができなくなりました。それで今、多くの学会が一般社団法人になっています。ですから、今は比較的なりやすくて、私も細胞生物学会の定款はすごく参考にさせていただきました。また、最近であれば植物生理学会などの幾つもの学会が、ちょうど同じぐらいの規模だと思うのですが、法人化しています。
 ですから、いろいろ考えると、確かに発生生物学会も絶対に法人になった方がよくて、多分、動物学会のように古い、法律がまだ非常に厳しかった時代の方に聞くと大変だと言うかもしれませんが、2008年以降だったら、もうかなり楽だと思います。

(阿形) では、最後に再生医療学会。

(岡野) 再生医療学会は一般社団法人ですが、これは2001年に前身の細胞療法研究会から再生医療学会に名前を変えたときに、一気に法人化もしようかということで一般社団法人になりました。
 やはり先ほど言いましたように、法人化していないと、どうしても大会に関する運営資金が個人資金になります。少し面倒くさいかもしれませんが、社団法人化して、それなりのファンドレイジングをして、活動度を上げる方がよほどプロダクティブです。また、会員数の減少等のいろいろな問題の解決の糸口にもなるのではないかと思いますから、できそうな気がしますので、頑張ってください。
 私は国立ではなくて私立にいますから、よく感じるのですが、やはり「財の独立なくして学の独立なし」といって、ちゃんとした資金的基盤がないと、学問的なアクティビティもしっかり発揮できないということは当然あります。そのためには社団法人化して、収入が入るのを恐れずにやっていかないと、なかなか今後は厳しいのではないかと思います。

(阿形) ありがとうございました。実は法人化問題については、3年前に私が会長だったときに、発生生物学会の運営委員会で公益法人化した方がいいのではないかと言ったら、ほとんど村八分状態でいじめられて、その後、暗くなったことだけ覚えています(笑)。次は上野会長が暗くなるかもしれませんが、これは現会長への引き継ぎ事項ということで、また考えてもらいたいと思います。

(上野) 私が法人化をサボっているという雰囲気がだんだん出てきたのですが、まだまだ元気で、特に皆さんに迷惑を掛けることがないようにしますけれども(笑)、私が幹事長のときも法人化の議論はあって、先ほどオタクの集まりというお話があったのですが、まさに発生生物学会はそういうところで、役割を終えたらいつでも解散する心の準備ができているという気概を持った学会です。ですから、私も法人化によって研究者がそれに余分な労力を払うことに対して、どちらかというと消極的な考え方だったのですが、恐らく私が会長のときに終わらなければ、次期会長への申し送りという形で考えたいと思います。

(阿形) ありがとうございました。
 それでは、20時32分になりましたので、2分超過してしまいましたが、これで5回目の10年目の反省を終わりにしたいと思います。今回の議論についてはテープ起こしをして、ウェブ上に公開する予定です。ご発言された方々には原稿をチェックしていただき、それからアップしたいと思います。
 また、今日は五つの学会の会長、理事の方々に外からのご意見、いろいろと前向きなご意見を言っていただきました。本当にありがとうございました(拍手)。今日の反省を前向きに取って、にぎやかでアクティブな学会として次の10年間を頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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