岡田節人基金 海外派遣助成報告書 池田達郎(京大)

CONFERENCE REPORTS

岡田節人基金 海外派遣助成報告書 池田達郎(京大)

岡田節人基金 海外派遣助成報告書 池田達郎(京大)

75th SDB with 19th ISD成果報告書

京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻 動物学教室
動物発生学研究室 博士後期課程3年
池田 達郎

 今回私は、岡田節人基金若手研究者海外派遣助成をいただきまして、8月4日から8日までアメリカ、ボストンで開催されたSociety for Developmental Biology 75th Annual Meeting with International Society of Differentiation 19th International Conference (75th SDB with 19th ISD)に参加してきました。私にとって今回が人生初の訪米となりました。アメリカは科学研究で世界をリードしてきた国だと思うので、そのアメリカの発生生物学会はどのようなものかと、参加する前から非常にわくわくしていました。また、学位取得後の自身の研究の方向性を考えるうえで役立つヒントを得られればと期待していました。

 ボストンはアメリカで最も歴史のある街の一つですが、高いビル、大きい建物が並び、訪れてみると想像していた以上に都会でした。チャールズ川をはさんだ対岸のケンブリッジ市にはマサチューセッツ工科大学とハーバード大学もあり、この地がアメリカの科学の礎を築いたのかと考えると、非常に感慨深いものがありました。

 今回の合同大会は非常にプログラムの密度が高く、毎日午前7時台から企画が始まり、午後6時ごろまで口頭発表のセッションがおこなわれ、午後8時から11時までポスターセッションがおこなわれました。ぶっ通しで口頭発表を聞いたあとさらにワイン片手に侃々諤々ポスター前で議論するアメリカの研究者たちの姿を見て、そのパワフルさを肌で感じました。

 私はポスター発表で、「ホヤ胚の予定脳細胞においてリプレッサーによる時間的な調節が脊索のプログラムを抑制する」という内容で発表をおこないました。10名程度の方に話を聞いていただけました。ホヤというメジャーでないモデル生物の研究発表でしたが、聞いてくださった方々はほぼ全員が脊椎動物の研究をされていて、異なる生物の研究者の視点から多くの意見をいただけました。特に「このメカニズムは進化的に保存されているのか」という問いが多く、その点に関する他の生物での先行研究の読み込みが甘かったと感じたため、今後は意識して勉強しなければと感じました。
 今回私はポスター賞の選考に応募していたため、2人の審査員の方がポスターに来られたので、研究成果のアピールをしました(残念ながら受賞は逃しました)。その際1人の方に、「大きな夢を語りなさい。君の発見がどう医療など大きなことに貢献するのかをもっと語るんだ」という意見をいただきました。私はこれまで「生物がどう生まれどう生きるのかを徹底的に理解したい」というモチベーションで研究を進めてきました。しかし現象を解明するだけでなく、その研究成果がどのように他人の研究にインパクトを与えるか、世界を変えうるかということを、発表の前に徹底的に考えておくことが、アピールのために重要であるということを認識させられました。

 他の人のポスター発表を聞く際、すでに人が集まって議論が活発になっている所に入っていくのは、英語を最初からフォローするという意味でも大変に感じました。一方で、まだ聴衆が集まっていない人に話しかけると一から丁寧に説明してくれるし、その後会場ですれ違うたびに声をかけてくれました。国際学会のポスター発表で誰かの話を聞きたい場合は、人が集まる前からかじりつくのがコツなのかなと思いました。

 学生、新進気鋭のポスドクおよび若手PI、一度は名前を聞いたことがある超大御所と、様々な人がセッションで話していました。これらアメリカの研究者の発表を聞いていて鮮烈に感じたのは、プレゼンテーションが洗練されていてスマートであることです。スライドが計算されて作られていて、ジェスチャーも上手く、いかに発表の場を大事にしているかが伝わってきました。また話す内容の密度が非常に濃く感じました。これは英語と日本語の言語構造の違いに起因するのかもしれません。私には欧米人の英語のプレゼンテーションを聞き取れない部分がどうしても存在して、このヒアリングの限界を押し上げることはとても大変に感じます。しかし、科学が英語を共通言語におこなわれている以上、英語能力を伸ばすために際限なく努力していかなければならないと、今回の学会で痛感しました。

 75th SDB with 19th ISDに参加して、自身の研究を発表し意見をもらうだけでなく、アメリカの発生生物学の世界の一端に触れ、色々なことを異なった視点から見つめ直すことができました。この経験を生かし、今後の研究者としての自身の将来を模索していこうと思います。最後に、今回の学会参加を援助していただいた日本発生生物学会ならびに関係者の皆様、そして岡田先生に深く感謝いたします。