岡田節人基金 海外派遣報告書 仝 由悦(東京大学)

CONFERENCE REPORTS

岡田節人基金 海外派遣報告書 仝 由悦(東京大学)

岡田節人基金 海外派遣報告書 仝 由悦(東京大学)

東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻
動物発生学研究室 修士課程2年
仝 由悦

 この度、岡田節人基金若手研究者海外派遣助成を頂きまして、10月10日―10月13日にドイツで開催された日独合同若手ミーティングに参加致しました。テュービンゲンにてDay 0ワークショップが行われ、続いてウルムで行われたGfe School 2018 に参加しました。

テュービンゲンはドイツ南部に位置し、人口約8万人のうち3万人程を学生が占める古くからの大学都市です。昔ながらの建物が多く現存し、伝統的な街並みが広がっています。Day0 workshopは、テュービンゲンにあるマックス・プランク研究所で行われました。Patrick Muller先生の研究室にお邪魔し、3つのグループに分かれてローテーションしながら、ゼブラフィッシュ飼育施設の見学、ライトシート顕微鏡による撮影、FRAP解析などを体験しました。

 ゼブラフィッシュ飼育施設は、建物の別館一つを占める大規模なものでした。かつてDevelopment誌1冊を占めた、歴史的なゼブラフィッシュ大規模スクリーニングが行われた場所で、まさにこの部屋でその研究が行われたのだと想像すると、感動に似た不思議な気持ちでした。また、自動フィーディング・マシーンを導入した新施設も案内して頂きました。魚の水槽に張られたバーコードを機械が読み取り、成魚と幼魚で餌のやり分けもできるそうです。魚が元気にしているかどうか毎日チェックすることが義務付けられているとのことで、高度にシステム化されていながらも実験動物を大事にする気持ちを改めて確認させられました。確かに、どの水槽の魚も元気に泳いでいて、その生き生きとした姿は心に残りました。

 ライトシート撮影とFRAP解析では、実際に顕微鏡の操作を体験し、それぞれ自作の3D画像構成ソフト、FRAP解析ソフトについて教えて頂きました。特にFRAPは教科書や論文で馴染みの手法でしたが、今回初めて実際の実験をやりました。ゼブラフィッシュ初期胚を模した、こちらも自作のプレートに蛍光試薬をマウントして、FRAPをかけました。実験の道具から解析ソフトまで、必要なものは何でも自作する精神に、以前に聞いた南極観測隊・医療隊員の先生のご講演が思い出されました。南極で学んだ最も大事なことは、足りないモノは何でも自分で作ってしまえばいい、という内容のお話でした。「○○が無ければ、作ればいい。」研究にこそ、この精神が大事だと実感しました。

 Gfe School 2018は、テュービンゲンから電車で2時間ほど離れたウルム郊外にあるSchloss Reisensburgで行われました。Schloss Reisensburgはウルム大学付属の古城で、参加者60人程の合宿形式で、アットホームな雰囲気の中で密度の濃い議論が繰り広げられました。

"Imaging and Modeling Development"をテーマに、3日間に渡り数多くの研究が紹介されました。イメージングの手法や使い方、モデリングとの華麗な合わせ技など、参考になるお話がたくさんありました。メダカやゼブラフィッシュの側線の特徴的なパターンが形成される過程の解明、多数のサンプルを1時間足らずで一気に観察できる手法、目的の組織に到達後もせわしなく動き続ける始原生殖細胞の挙動など、興味深い発表を上げるとキリがありません。また、これまで馴染みの薄かったヒドラやトリボリウムといった生物を扱った研究も印象的でした。一日目と二日目の最後にはポスター発表が行われ、いつも日付が変わる時間まで熱い議論が続きました。私はGfe Schoolの二日目に、"Live-imaging and 3D analysis of zebrafish somite morphogenesis"というタイトルでポスター発表を行いました。色々な方から、細胞レベルの挙動や分化から組織レベルのエネルギー消費や代謝まで、様々な観点からの意見を頂けて、とても勉強になりました。専門の内外問わずどのような話にもついてこられる知識の広さとディスカッション力に圧倒されるとともに、全身でサイエンスと向き合い、楽しむ姿勢にエネルギーをもらったような気がしました。

ワークショップ・ミーティングを通して、新たな学問や手法について知ったり、ドイツの研究者の方々との交流を通してドイツの文化や研究を体感したり、貴重な経験となりました。今回得られた数々の発見や気づきは今後研究の道に向かって進んでいく中で必ず生きてくると思います。来年の発生生物学会では同様な日独若手ミーティングが開かれるそうで、今回知り合った方々と再開するのが楽しみです。

最後になりましたが、このような貴重な機会を頂き、ミーティングを主宰された上野先生、Cantas先生、森本先生、発生生物学会の皆様そして岡田先生に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。