海外だより№2 後藤彰さん(ストラスブール大学)

SPECIAL MESSAGE

海外だより№2 後藤彰さん(ストラスブール大学)

海外だより№2 後藤彰さん(ストラスブール大学)

Akira & Hoffmann.jpg

所属:ストラスブール大学、フランス国立科学研究所(CNRS)、昆虫自然免疫モデルユニット(M3I; UPR9022)
University of Strasbourg, CNRS, Insect Models of Innate Immunity (M3I; UPR9022).

タイトル:ショウジョウバエをモデル生物として用いた自然免疫シグナル伝達経路の研究

 現在、私はフランス国立保健衛生医学研究所(INSERM)の主任パーマネント研究員として、フランス・ストラスブール大学で働いています。名古屋大学院時代は、故・北川康雄教授および門脇辰彦准教授の下で、ショウジョウバエの培養細胞から、ヒトの血液凝固因子の一つであるvon Willebrand factor(vWF)と相同性を有するHemolectin(Hml)を発見しました(Goto et al., 2001 and 2003)。この博士研究をきっかけにして、自然免疫の研究分野に魅了されました。当時から有名であったPr. Jules Hoffmann(2011年ノーベル医学生理学賞を受賞)に直談判の手紙を書き、ポスドクとしてPr. Jean-Marc Reichhartのチームで働きました。その間、ショウジョウバエの自然免疫経路の一つであるImmuno deficiency (IMD)経路の活性化に関わる新規核内因子Akirinを同定しました(Goto et al., 2008)。日本に帰国後は、理化学研究所の藤井慎一郎先生のもとで、哺乳類を用いた自然免疫研究について多くのことを学びました。この経験を生かして、またショウジョウバエを用いた研究に戻り、東北大学の倉田祥一朗教授のもとで、細胞内寄生細菌リステリアの感染防御に関わるListericinを見つけました(Goto et al., 2011)。その後、フランスに戻り、Pr. Jean-Luc Imlerと共に、抗ウイルス反応に関わる新しい経路(dSTING-dIKKβ-NF-κB)とその経路が調節する新しい抗ウイルス因子Nazo(謎)を同定しました(Goto et al., 2018)。
 このように私は、これまで自然免疫シグナル伝達経路の分子機構の解明を目的として、様々な病原菌(細胞外細菌、カビ、細胞内細菌、ウイルス)を用いて研究を続けてきました。学位取得後から、ポスドクと特任助教を経て11年後にポジションを取りました。苦しかった時期もありますが、多くの興味深い研究テーマに携わることによって、たくさんのことを学び経験を積むことができました。当研究室は、ショウジョウバエおよび蚊を用いた自然免疫の研究に精通した有能な研究者が多く所属しています。ほぼ毎週、研究所内セミナーや招待講演セミナーなども開かれ、日本を含め外国との共同研究も盛んに行われています。
 ストラスブール市は、 45万人ほどの中規模都市ですが、多くの歴史的な建物もあります。旧市街のプティットフランス、欧州会議場、大聖堂など、見どころ満載です。 美味しいワインとアルザス料理も楽しめます。ドイツのケール市は車で15分ほどで、ドイツの美味しいビールや料理も楽しめます。住みやすい街です。
 2015年にはHDRも取得したので、少人数ではありますが、新しく抗がん免疫の研究プロジェクトに挑戦しています。興味深いデータも出始めてきたので、現在ポスドクを募集中です。ご興味のある方は、是非ご連絡ください!

主な論文:
1.Goto A*, Okado K, Martins N, Cai H, Barbier V, Lamiable O, Troxler L, Santiago E, Kuhn L, Paik D, Silverman N, Holleufer A, Hartmann R, Liu J, Peng T, Hoffmann JA, Meignin C, Deaffler L, Imler JL*. The kinase IKKβ regulates a STING and NF-κB-dependent antiviral response in Drosophila. Immunity 49:225-234. (2018) * Corresponding authors.
2.Goto A*, Fukuyama H, Imler JL, Hoffmann JA. The Chromatin Regulator DMAP1 Modulates Activity of the Nuclear Factor κB (NF-κB) Transcription Factor Relish in the Drosophila Innate Immune Response. J. Biol. Chem. 289:20470-20476 (2014) * corresponding author
3.Goto A, Yano T, Terashima J, Iwashita S, OshimaY, Kurata S. Cooperative regulation of the induction of the novel antibacterial Listericin by PGRP-LE and the JAK-STAT pathway. J. Biol. Chem. 285:15731-15738 (2010)
4.Goto A, Matsushita K, Gesellchen V, Kuttenkeuler D, Takeuchi O, Hoffmann JA, Akira S, Boutros M, Reichhart JM. Akirins are highly conserved nuclear proteins required for NF-κB-dependent gene expression in drosophila and mice. Nat. Immunol. 9:97?104 (2008)
5.Goto A, Blandin S, Royet J, Reichhart JM, Levashina EA. Silencing of Toll pathway components by direct injection of double-stranded RNA into Drosophila adult flies. Nuc. Acid Res. 31:6619-6623 (2003)
6.Goto A, Kadowaki T, Kitagawa Y. Drosophila hemolectin gene is expressed in embryonic and larval hemocytes and its knock down causes bleeding defects. Dev. Biol. 264:582-591 (2003)
7.Goto A, Kumagai T, Kumagai C, Hirose J, Narita H, Mori H, Kadowaki T, Beck K, Kitagawa Y. A Drosophila hemocyte-specific protein, hemolectin, similar to human von Willebrand factor. Biochem. J. 359:99-108 (2001)