会長からのメッセージ(2019年6月)

MESSAGE

会長からのメッセージ(2019年6月)

会長からのメッセージ(2019年6月)

DrTakeda.JPGのサムネイル画像

日本発生生物学会会員の皆様、

先月開催された第52回年会(大阪)の総会で、日本発生生物学会(JSDB)の会長(理事長)に選ばれました。4年超に渡り日本発生生物学会の発展に貢献した上野前会長の後を引き継ぎました。

1968年に創設されたJSDBは、2年前50周年を迎えたことは記憶に新しいことと思います。この間、発生生物学の分野をリードする学会として世界的にも認知されてきました。このような由緒ある、そして高いアクティビティを有する学会の運営をこれから約2年の間託されたことは大変光栄です。

記憶をたどってみますと、私がJSDBの会員になったのが1984年、大学院生として熊本大会(17回)に参加する直前でした。研究仲間、同僚、学生にも恵まれ、それ以来35年間一貫して発生生物学の分野で研究を続けることができました。もちろんこの間、研究テーマや実験動物は激しく変化しました。テーマとしては、上皮-間充識相互作用、中胚葉・神経誘導、体軸形成を経て最近ではゲノムとエピゲノム、実験動物としては、マウス、ラット、ニワトリからゼブラフィッシュ、メダカへ変わりました。このように探究心のおもむくままに旅する私をJSDBは常に見守ってくれました。JSDBは、私にとって、育ての親のように感じています。そして今、JSDBやお世話になった方々に少しばかり恩返しをする機会を与えてもらったことと、思いを新たにしています。

会長となることには重い責任を感じます。我々を取りまく環境は大きく変わっています。基礎科学への風当たりが強くなり、評価による締め付けもあります。また基礎的なテーマで研究費を獲得することの困難さも増しています。さらに深刻なことは、日本の大学では、博士課程に進学する学生の数が過去10年の間でかなり減少し、それがボディーブローのように、JSDBを含む基礎系学会の活動に影響を及ぼしています。発生生物学そのものも大きく変わりつつあります。発生生物学は、分子生物学、細胞生物学、イメージング技術、メカノバイオロジー、ゲノム科学などを取り入れながら、基礎生物学のコアであり続けています。一方、新しい学問が発生生物学から生まれ、巣立っていきました。幹細胞生物学、再生生物学などです。研究環境が厳しくなり、研究のトレンドも激しく変わる時代において、目先のことに目が奪われがちですが、私たちの研究(動機)の原点を常に忘れないでほしいと思っています。発生生物学に入ったきっかけは何だったでしょうか。多くの人は、胚発生の美しさに魅了されてのことであったと思います。そして、その裏に潜む秘密を少しでも理解したいという衝動に駆られて研究をしてきたのだと思います。ノイズが多い生物環境で、なぜこんなに美しく、完璧な形態形成が進行するのでしょうか。このような基本的な問いは、常に私たちの想像力を掻き立て、私たちを未知の世界に導きます。未知の世界への挑戦には、どん欲に他分野からの新しい概念と技術を取り込むことが必要です。月並みですが、ステーブ・ジョブスの有名なスピーチを思い出してください - Stay hungry, Stay foolish。

学会の主な役割は、会員の研究成果やアイデアを自由に共有できる場を提供することです。そしてそのような環境は、国際的であるべきです。JSDBは今後も国際化の方針を堅持し、世界の関連学会と連携し、発生生物学の発展に貢献していきます。JSDBをさらに魅力ある、そして皆さんにとって意義あるものにしたいと思っています。そのためにできることは何かを新執行部のメンバー (http://www.jsdb.jp/about/organization2019.html)と共に考え、実行に移していきたいと思います。会員皆様からの意見を歓迎いたします。

2019年6月
武田洋幸
日本発生生物学会会長