阿形からの4年間の会長を終えるにあたっての報告と総括

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阿形からの4年間の会長を終えるにあたっての報告と総括

阿形からの4年間の会長を終えるにあたっての報告と総括

日本発生生物学会会員各位

2期4年にわたる任期を終え、来月から上野次期会長へとバトンタッチする現会長の阿形です。この4年間の総括をしたいと思います。

0.学会全体の底上げ
 竹市会長/相澤会長の時に発生生物学会は国際化を強力に進め、最も先鋭化した学会へと変貌を遂げて行きました。何と言っても、国内年会に常時100名前後の海外参加者があり、国内学会でありながら英語でディスカッションしているのが普通という--日本とは思えない環境を作ることに成功しました。
 しかし、先鋭化した会員とそうでない会員との間で少し距離感が生じたことも確かであり、私としては、この国際化の路線を継承しながらも、全体的な底上げを会長としての課題としました。

1. 年会の発表形式の転換
 従来の年会では一般会員の口頭発表が主流で、会員ならだれもが口頭発表できました。その結果、会員の間で、誰がどんな研究をどのような方法論で展開しているのかを長年にわたりフォーローしながら毎年深く議論できるのが年会の特徴となっていました。

特に、発生生物学会は厳しい突っ込みがあることで知られており、生半可な準備や実験で発表でもしようものならおもいっきり叩かれていました。(みんな発表前には緊張感が走っていました。聴衆も誰がどんな切り口で突っ込みを入れるかをハラハラしながら見守っていたものです)。これが学会全体のレベルを上げている要因ともなっていました。

ところが遺伝子クローニングが全盛期を迎え、いわゆるcloning/sequence/expression(CSE)が発表のほとんどとなると、口頭発表はつまらなくなり、CSEならポスターでいいんじゃないの--となりました。その結果、ポスター発表が主流となり、気がつくと、一般会員の発表はポスター、トークは招待講演者--という図式が定着してしまいました。

しかし、昨今の発生学は、ビジュアルな発表が増え、ムービーを見ながら議論するような発表が増えてきたので、一般会員の発表でもポスターより従来の口頭発表形式で議論する方が楽しめるのでは--というのが小生の感想です。(ネットでWebページやデータベースへアクセスして議論する時代も間近と思います)

そこで、各会員が発表内容に応じて、ポスターか口頭発表かを選択できるような仕組みを構築するのが良いのではということで、一般会員の口頭発表枠を増やすことを行い、新鮮味のあるトークで議論が活発化することを狙いました。

2. 当面の目標設定について
 ポスターか口頭発表かを選択できるような仕組みを構築するとともに、一般会員による英語での口頭発表を底上げして、それに対する議論を英語ですることを積み重ねることで、会員全体の国際化の底上げをすることを当面の目標としました。その目標達成のために、島根と名古屋の大会から、一般会員の英語での口頭発表を増しました。最初は少しぎこちないところもあるかと思いますが、とにかくこれらの努力を積み重ねていくことで、学会の売りであった活発な議論が、自然のうちに英語へと置き換わっていくことを目標にしています。

【解説】日本人同志で英語でやる陳腐さを払拭するためには、日本の年会に5分の1くらいの割合で海外からの参加者があることがポイントとなります。竹市会長の時から始まったAPDBN(アジアパシフィックの発生学者組織)の組織化とその年会への参加はその大きな一助となりました。さらに、相澤会長の時からはじまった海外の学会との交流事業についても、名古屋大会からhome&away方式のジョイントシンポをお互いの年会で開催することで海外参加者の増加につなげています。

3. 海外交流促進のための岡田節人基金の設立
 日本発生生物学会の設立メンバーの一人だった岡田節人博士は、我が国における発生生物学の立ち上げと同時に、グローバル化にもご尽力してこられました。博士は引退された後も、我が国の発生生物学の国際レベルでのさらなる躍進を期待され、海外交流助成のための「岡田節人基金」を設立されました。そこで、日本発生生物学会は、発生生物学の将来を担うグローバルな視野に富む研究者の育成を目的とし、海外で開催される発生生物学に関連する国際会議(学会・シンポジウム等)での発表、または海外で開催される発生生物学に関連するコースへの参加に要する経費の一部を助成します。加えて、若手研究者の国際的な討議・意見交換・講演等のスキルおよび国際的評価の向上を目的とし、発生生物学分野において優れた研究業績を有する外国人研究者を、国内で開催される発生生物学に関連する会議(学会・シンポジウム等)に招聘する場合に要する経費の一部を助成します。年2回の公募、年度をまたいでの申請もできるようにしています。奮ってご応募ください。

4. DGDの安定飛行と赤字体質からの脱却(冊子体の廃止)について
 学会誌DGDについては、仲村編集長が継続的・戦略的に編集活動をできる仕組みを構築したことで、IFは2.4まで達し(もちろん、仲村編集長と会員の努力の賜物と思います)、赤字体質からの脱却も図りました。そして、残念なお知らせではあるのですが、冊子体の印刷・配布を来年から取りやめることを本年の総会で決定しました。今まで、お手元にDGDの冊子体が届くのを楽しみにされていた会員には申し訳ないのですが、今月届くvol.56, No.9をもって送付は終わることになります。これからは事務局から来る新刊DGDの案内メールをクリックしてDGDを読んで頂きたいと思います。何卒よろしくお願いします。これで、赤字体質から脱却することになります。会員からの論文投稿で、DGDの安定成長を目指したいと思います。ご協力お願いします。

以上、短いものでありますが、4年間の報告とさせて頂きます。ありがとうございました。

-阿形清和