2009年2月 会長メッセージ

MESSAGE

2009年2月 会長メッセージ

2009年2月 会長メッセージ

2009.02.09
相沢慎一

 本年1 月より 2010 年 12月まで 引き続き 日本発生生物学会会長をお引き受けすることになりました。1 月 24 日に運営委員会が開かれ、またこれに先立ち 1 月 10 日に全国の大学から 22 名の会員にお集まり頂き日本発生生物学会の運営についてご意見を伺いました。両会での議論をふまえ 発生生物学会の現状について報告させて頂きます。


発生生物学会の中心活動は年会ですが、本年は濱口哲大会長のもと5 月28 日~ 31日新潟で開催し、来年は上村匡大会長のもと6月21日~23日京都で開催しますが、再来年2011 年(平成 23年)は政井一郎会員に大会長をお願いし沖縄で開催することとなりました。また、欧米の年会を日本発生生物学会との合同年会とし、日本の優れた研究が欧米で発表の場を確保することを試みています。昨年9月フランス発生生物学会との合同年会 (Giens) では76名の日本人研究者の参加を得(全参加者300 弱;日本人Keynote and Invited Speakers 10名)ました。本年は国際発生生物学会 (ISDB) 開催年(9月6日~10日、Edinburgh)ですが、来年 (2010年) は米国の発生生物学会年会(日本側担当者近藤寿人)と、再来年(2011年)はドイツの発生生物学会年会(日本側担当者阿形清和)と合同年会を開催するのに引き続いて、2012 年はイギリスの発生生物学会年会(日本側担当者上野直人)を合同年会として開催する計画でおります。また、若手PI・ 準PI の間での切磋琢磨と連携の目的で、秋季シンポを1昨年岡崎基生研で開催しましたが(参加者68名)、本年秋第2回を三島で開催します(相賀裕美子会員担当)。また、若手助教・研究員・ポスドク・大学院生間での切磋琢磨と連携のための夏季シンポジウムを昨年夏開催しましたが(参加者65名)、秋期シンポと隔年で来年第2回を開催します(嶋村健児会員担当)。皆様の積極的参加をお願い致します。フランスとの合同年会、第一回秋季シンポ、第一回夏季シンポについては、参加者のアンケートを学会ホームページに(http://www.jsdb.jp/ ) 載せてありますのでご覧下さい。これらの企画について各担当もしくは事務局にアドバイス、ご意見を頂けると幸いです。日本発生生物学会ではまた昨年高校教員研修会(八杉貞雄会員担当)をCDBと共催で神戸で開催しましたが、本年もCDBと共催で神戸で開催するとともに、首都大学と共催で東京でも開催する予定です。高校教育の問題、特に教員教育に一小学会の出来ることなど焼け石に水ですが、それでもなにもやらないよりはせめてという考えです。


日本発生生物学会の他の大きな活動は Development Growth & Differentiation 誌の発行ですが、仲村春和編集長の多大な尽力によりImpact Factor も2 を越えました。会員皆様に積極的に投稿頂けますようお願い致します。また発表したご自身の論文は積極的に引用くださいますようあわせてお願いします。財政的にも仲村編集長のご努力により、 DGD 発行に学会の負担はなくなる方向にあります。


さて本年は <年会の持ち方について> 御議論頂きたいと思っております。具体的な議論は新潟大会を踏まえて提起させていただく予定で、ここでは英語化にまつわる基本的な課題についてのみ予め提起させて頂きます。


年会の英語化は2006年広島大会より取り入られ、2007年福岡大会(細胞生物学会との合同年会)で本格化し、2008年徳島大会に引き継がれ、スライド、ポスターは英語で書いて頂き、口頭発表は英語、ポスター発表は外人相手でなければ日本語でのやりとりとなっています。欧米の研究者の参加なく年会を開催することはもはや考えられず、彼らが発表をしたら観光旅行という時代でもなく、日本の発生研究のレベル、またどなたも論文は英語で発表されること、更には Asian Pacific Developmental Biology Network (APDBN) を組織してアジア地区での発生研究を日本が主導しようという流れの中にあっては、年会英語化の維持はまげられないと考えます。であれば海外、特にAsian Pacific 地区の研究者にもっと積極的に参加呼びかけをすべきではないでしょうか。日本発生生物学会の年会が英語化していることはAsian Pacific にほとんど知られていませんし、これまでは国内会員参加者のことしか考えておらず、海外からの参加を得るため年会を宣伝する努力をポスターの送付を含め組織的にはほとんど行ってきませんでした。急に参加者が増えるという妙案はなく、地道な努力を積み重ねるよりありませんが、京都大会はAPDBN との合同年会とすることになっており、この年会をきっかけとしてもう一歩年会の国際化にふみだせないでしょうか。同時にこのためには年会の企画が海外の研究者に魅力のあるものとしてアッピール出来なくてはなりません。外国人、日本人の魅力あるPlenary Lecture、斬新な企画とともに欧米、Asian Pacific、日本の魅力ある人の名があるSymposiumであることは肝要でしょう。さらには一般演題のOral枠に一定のAsian Pacific 枠をもうけたり、大会参加費免除など、Asian Pacific の人が参加しやすい工夫も考えるべきかもしれません。


他方英語化にはDiscussionが深まらないなどの反対意見に加え、これに全国の大学がどれだけ対応出来るのかというシリアスな問題があります。修士の学生によって研究を継続する全国の大学では、英語発表迄の指導をすることが困難で、学生も英語化にはとてもついてこれないという事情もあります。研究者になる人だけのための学会でよいかという議論もあろうかと思います。全国の大学の教員は 大講座制となって皆一人でやっており、教育義務が現今特に過重となっており、かつ学生を中央にとられ、ろくに研究費も確保出来ず、研究推進が困難という事情を何処も抱えています。年会開催は中央の大学だけでなく全国でというのが発生生物学会の考えでしたが、年会を引き受ける余裕も力も無く、ましてやそれが英語では開催するメリットもないという声も聞かれます。全国の大学で学生会員数は減少し、正会員もどんどんいなくなってしまうのではという危惧もあります。大会前日の午後に若手対象の日本語でのワークショップが開催されますがその持ち方を含め、年会には全国の視点からどのような工夫がありえるでしょうか。

年会とは関係ありませんが、全国の理学部での発生教育にも危機感を感じます。定員減と非常勤廃止などにより、植物・無脊椎動物・脊椎動物の全体に渡って発生を教えられなくなったところが多いどころか、生物学科でありながら発生学の教育が全く行われていないところさえ少なくありません。然るべき裾野があるなかで世界との競争的研究そしてオリジナルな研究も成り立つものであることはいうまでもありません。学問の世界でも中央と全国の格差が、断絶に近くまで大きくなっている問題は、学会、ましてや一小学会の範疇を越えることで、これには無力であるのがまた学会というものではありましょう。サイエンスの基盤は一人一人の研究で、その上でのことしか我々には無いと思いますが、しこうしてせめてもした方がいいことは何でしょうか。学会が退職した会員、研究所の会員などを講師として組織して、全国の大学に派遣することも考えた方がいいのでしょうか。

本件に関するご意見は学会ホームページ (http://www.jsdb.jp/) 掲示板あるいは事務局 (momozu@jsdb.jp) にお寄せ下さい。